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漂う小物臭

by 唐草 [2014/04/20]



 優れた物語には、優れた悪役の存在が欠かせない。これがぼくの持論だ。主役の優秀さを引き立てる悪役。主人公が行動を起こす動機を生み出すだけの感情を掘り起こすことのできる悪役。
 起承転結のあるような物語においては、悪役は絶対に欠かせない要素だ。悪役が優秀であればあるだけ、物語に深みを与えてくれる。
 ぼくの好きなジブリ作品である『天空の城ラピュタ』なんて悪役であるムスカのキャラクター性だけで物語が進行しているようにさえ思える。あれがもう少し違った人物だったら、あんな冒険活劇を生み出すだけのエネルギーは発生しないだろう。
 さて、シャーロック・ホームズシリーズにも何回か名前が出てくる悪役がいる。モリアーティー教授だ。
 ホームズが事件を解決する正義の味方だとすれば、モリアーティー教授はその対の存在。犯罪者に犯罪の手引きをするような立場だ。絶対に自分の手を汚すことなく悪事を重ねていく。
 劇中に何度か名前が出てくるし、モリアーティー教授の息のかかった犯罪組織がいかに大きいかを説明する描写もある。そして、ホームズを死の淵へと追いやることとなる人物でもある。
 でも、作品を読む限りホームズに負けてばかりで、あまり優秀な人物という印象は持てない。最後の対決で、格闘の末ホームズとともに滝に落ちて死んでしまう。この泥臭い最期に、あまり知性を感じられない。とてもイギリスを裏から牛耳っていたような犯罪組織のボスとは思えない行動だ。
 モリアーティー教授には、冒頭で述べたような主人公を引き立てる優れた悪役と呼ぶにふさわしい実績が何もない。むしろその逆で、優れた主人公がライバル視しているので、優れた悪役なのかもしれないと思う程度だ。
 モリアーティー教授からは、どうしても隠しきれない小物臭がする。まぁ、その小物っぽいところが好きなんですけどね。