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怖い話

by 唐草 [2014/08/28]



 怖い話が好きだ。思い起こせば小学生ぐらいの頃から『世にも奇妙な物語』とかを楽しみに見ていた。当時は、毎週放送だったような記憶がある。
 怖い話し好きの性質は、今でも変わっていない。ネットロアやらオカルト系のまとめを読んでは喜んでいる。
 一口に怖い話と言っても様々なタイプがある。以前、怖い話の類型化を行おうと試みてありとあらゆる怖い話を読み漁っていた時期がある。様々な分類方法があるとは思うが、ぼくの中では大きな区分として次の分類を使っていた。
 『心霊怖い系』と『生きた人間怖い系』。
 怖い話が好物なぼくだけれども、幽霊は信じていないので『心霊系』の話はまったく心に響かない。「ふーん、伝統的だねぇ」ぐらいの感想しかない。やっはり、生きた人間の方がずっと怖いと考えている。夜の真っ暗な公園でサイクリングをしている際に怖いのは、人がいない事は出ない。むしろ、人がいる方が怖い。誰もいなければ何も起こらないが、誰かがいれば何かが起こるかもしれないからだ。
 さて、ぼくの区分の中では『生きた人間怖い系』と分類していた話であっても、別の人が必ずしも同じように解釈するとは限らない。
 例えば、こんな話があったとしよう。
 
 誰もが寝静まった午前2時頃。自宅のあるマンションに戻ったぼくは、自室のある最上階の6階に行くために1階からエレベータに乗った。すると、こんな時間なのに2階で停止した。扉が開くと息を切らした男が立っている。扉を塞ぐようにエレベーターに乗り込んでくると、奇妙な声を上げながら扉を閉めるボタンを連打した。行き先階のボタンを押す気配は無い。どうやら、ぼくと同じ6階を目指しているようだ。こんな男に自室の場所がばれたらやばそうだ。そう思って他の階のボタンを押そうと思ったが、男が操作パネルの前にいてボタンが押せない。
 いつも以上にゆっくりとエレベーターが動いている様に感じられる。長い長い時間が経過してようやく6階に着く。
 男は飛び降りるようにエレベーターから降りる。だが、エレベーターホールから動く気配は無い。ずっとこちらを凝視している。このままでは、自室までつけられてしまう。何をされるか分かったものでは無い。ここは、安全のために一芝居うとうとぼくは考えた。
 「しまった、ここ6階じゃないか」とあえて聞こえるように言いながらぼくは階段を下りていった。男は階段の上からずっとぼくを見ている。あのまま、素直に自室に入っていたらどうなっていただろう?
 
 とあるネタの改変なのだが、良くある典型的な怖い話だ。ぼくはこの話を読んで2階から乗り込んできた男は狂気をはらんだ生きた実在の人間と考える。でも心霊話好きは、この話を読んで男は幽霊だと考える。要するに自分が怖いと思える解釈をしながら怪談を楽しんでいるのだ。つまり、より多くの人間を効率良く怖がらせるなら恐怖の対象を生きた人間とも幽霊とも解釈できるような設定にするべきなのだろう。
 なお、ぼくはループ系の話が大好き。
 上に書いた典型的な怖い話には、こんな続きを書きたい。
 
 男の視線を感じなくなったときは、階段で2階まで降りたときだ。走って階段を下りたのなんて、いつ以来だろう。日頃の運動不足のせいもあり、すっかり息が切れてしまっている。ここから階段を上がって6階まで戻るのはキツイ、男と鉢合わせするのも避けたい。エレベーターで戻ろう。エレベーターはいつの間にか1階に戻っている。2階でボタンを押したらエレベーターはすぐにやってきた。扉が開くとそこには、冷たい感じの先ほどとは違う男が乗っていた。
 さっきの男が階段を下りてきそうなので、急いで閉まるボタンを押す。行き先階を見て、ぼくは思わず声を上げてしまった。「6階」。この冷たそうな男も6階へ向かうのか?ぼくをつけ回すこの男たちは何者なのだろうか?逃げてばかりはいられない。この男の動向を見極めようと6階に着くとぼくはエレベーターを飛び降り、男の動向を凝視できるように身構えた。