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カモを見る

by 唐草 [2014/11/24]



 近所の公園に紅葉を見に行った。
 桜の名所として知られる近所の公園は、同時に紅葉の名所としても地元民に愛されている。住宅街にある公園なので、山間部のような見事な紅葉にはならない。でも、散歩ついでに紅葉を見られる人気スポットである。
 ぼくにとってこの季節の楽しみは紅葉だけではない。むしろ紅葉なんてオマケみたいなものだ。公園の池に飛来したカモなどの渡り鳥を見るのが本当の目的だ。
 公園にはいくつかの池がある。一番の飛来ポイントとなっている池は、公園中心にある。
 多くの人が頭上の紅葉を見ている中、ぼくはひとり水面を見つめていた。
 だが、そこには1羽の鳥もいなかった。
 今日は、公園でイベントが開催されている。入場待ちの列ができるほどの盛況ぶりだ。すぐ横を大勢の人が行き交う池は、鳥たちが羽を休めるのにはうるさすぎるのかもしれない。
 だが、この程度で鳥を諦めるぼくではない。
 この公園には、幼稚園に入る前から遊びに来ている。公園の変遷も施設も木々の様子も手に取るように分かる。こういう賑やかなときに鳥たちがどこへ移動するかもだいたい予想が付く。
 公園に立ち入り禁止の樹木保護エリアがある。その外れに浅い池がある。表通りから外れたそんなエリアに足を運ぶ人はまばらだ。きっと静かなそっちへ鳥たちは移動したに違いない。
 この長年の経験に基づく推測は大正解だった。
 裏の小さな池には、20羽程度のマガモが浮いていた。
 頭が深いメタリックグリーンの連中が、池底の藻を食べているようだ。この緑頭は雄。雌の姿が全然見えない。と思ったが、目が慣れたら次第に見えてきた。地味な雌の羽根は、見事な迷彩になっていた。動いているにもかかわらず、自然に中に溶け込んでいた。
 イベントで賑わう公園の喧騒から離れ、赤いナナカマドと黄色いイチョウが映える池に浮かぶカモを眺める静かなひとときを満喫した。