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恒例の会議

by 唐草 [2015/03/30]



 毎年恒例のある会議の季節が、今年もやってきた。
 会議という扱いの催しだが、実体はタダのガイダンス。大学で開催される講師向けの説明会だ。ぼくは、今年で3回目の参加となる。もうベテラン顔負けの余裕の表情で悠々とガイダンスに参加している。
 慣れというのは恐ろしい物だ。今日のガイダンスで誰がどんなことを話すのかだいたい分かっているし、違う学部向けの話は聞かなくてもなんら問題無いということを理解してしまっている。ぼくの態度は、まさに要領のいい不真面目な学生そのもの。初めて参加したときのように一言も聞き逃すまいと必死にメモを取る初々しい姿は、もう永遠に失われた。
 普段は教卓の側に立って「話をちゃんと聞け!」とか言っているくせに、いざ学生の側に座るとだらけてしまう。ついつい楽な方を選んでしまう。
 ただ、今年のガイダンスには新しい内容があった。学内のIT環境が一新されたらしい。学校が配布するIDで利用可能になるWi-Fiの更新や机に貼られたQRコードを利用した出席管理システムの導入に関しての説明があった。ただ、この説明に大いに問題があった。
 説明を担当したのは、開発を行っている教授。この先生にしてみれば学内の大規模ネットワークシステムは、学校運営を行うためのインフラではないのだろう。あくまで自分の研究を実装するための実験施設としか思っていないような話しぶりだった。技術基盤のことやらセキュア面の話などが中心で、利用ガイダンスというよりも技術仕様ガイダンスという内容だった。しかも、先生の専門分野の話なので長い。利用するにあたって必要のない知識がドンドン増えていく。予定時間もドンドン超えていく。つまらない話の授業を聞かされているような気分になってきた。
 当然、本来のガイダンスとかけ離れた内容だったので質問時間には、利用に際してのクリティカルな質問が投げかけられる事となった。
 だが、質問に対する回答は聞いているこちらが落胆してしまうような内容だった。
 先生は導入の事しか考えていないと言うのがよく分かった。アカウント管理などを行う事務の仕事など自分が知ったことかと言わんばかりの回答だった。
 学内の基本システム導入を一任されているので、きっと実績もある先生なのだろう。でも、絶対に運用向きの人材ではなさそうだ。まぁ、ぼくの作るだけ作って投げっぱなしにすることが多いので人のことは言えないが…。
 大学は学生にとっては、勉強をする場所かもしれない。でも、教鞭を執っている教授たちはほとんどそんなことを思っていないのが実情だ。教授らにとって大学とはあくまで研究の場でしかない。優秀な研究者が、必ずしも優秀な教育者とは限らない。
 グダグダの質疑応答を見ていて、そんな大学教育のシステムに潜む闇を再確認した気分になった。