カレンダー

2015/04
   
  
       

広告

Twitter

記事検索

ランダムボタン

Crossing Tokyo

by 唐草 [2015/04/18]



 ちょっと前までホームグラウンドが秋葉原だったぼくにとっては、異世界としか思えないほどに馴染みのない場所へ行ってきた。
 渋谷だ。
 それも夜の渋谷だ。
 土曜日ということもあって街は賑わっていた。多くの色とりどりな人が歩道を埋め尽くすように行き交っている。きっと渋谷としては珍しくも何ともない普通の光景なのだろう。でも、引きこもり予備軍なぼくにとってこの人混みは危険地帯。人をかき分け進んでいくだけでHPがガンガン下がっていく感じがする。ここは毒の沼地か。目的地に着く頃には、本当に気分が悪くなっていた。
 オエー。
 と、弱音を吐いたのが午後6時頃。しかも、京王線の駅から路地を抜けて道玄坂の上まで歩いたに過ぎない。駅前のスクランブル交差点とかハチ公周辺などの人口密度最高地点にはかすりもしていないのに既にボロボロになっていた。
 さて、ダラダラと食事を続けて店を出たのが11時ちょっと前。渋谷駅周辺の混雑を避けたかったので、神泉駅に逃げようと計画をしていた。でも、成り行きで駅前のスクランブル交差点に面したTSUTAYAまで拉致されてしまった。
 そこまでの経路の人の多さ。なんでこんなにも多くの人がここにいるのか到底理解出来ないような混雑っぷり。朝の通勤ラッシュの駅の階段と良い勝負だ。
 人の波に流されたり、人の波をかき分けながらどうにか駅前交差点へとたどり着く。またしてもHPは、スッカラカンになっている。
 ぼくは、TSUTAYAに用なんて何も無い。他の人たちが目的を済ませている間、行き交う人々を眺めていた。
 渋谷の交差点は、世界的に人気の観光スポットらしい。この国で暮らすぼくたちにとっては、腹が立つほどに混雑した交差点にしか過ぎない。海外の人からすれば、こここそまさに日本的に見えるのだろう。これほどまでに多くの人々が信号を守って街を歩き回り、そして誰かとぶつかることは稀。混沌と秩序が両立しているような奇妙な場所であると言える。
 ネットでも渋谷のスクランブル交差点の映像を目にすることはある。でも、一部の発信力の高い人が騒いでいるだけで、本当に人気スポットなのかは半信半疑だった。
 実際に夜の交差点を目にすれば、本当の事が分かる。
 ものすごく多くの外国人がスマホを高々と掲げて人が行き交う交差点を撮影していた。人気は本物なのか。ぼくの陰気な姿が誰かの観光の思い出の中に記録されているかと思うと不思議な気分になる。
 その中を歩いて思った。交差点の秩序が、撮影外国人のせいで乱れている。保護しなきゃ、日本独自の混雑を!