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パクチーを腹一杯

by 唐草 [2015/06/20]



 パクチー料理しかないというパクチー嫌いにとっては拷問のような店に行ってきた。参加者は、無論全員がこの店を天国と思えるようなパクチー好きだ。
 ありとあらゆるパクチー料理を食べてきた。パクチー生春巻き、パクチーサラダ、パクチーコロッケ、パクチー天ぷら、パクチーパスタ、パクチー麺、パクチーご飯。すべてが鮮やかな緑色に彩られ、強力な香味が舌と鼻を刺激し続けていた。飲み物もパクチー尽くしだった。ぼくが飲んでいたパクチーモヒートは、ミントの代わりにパクチーが入ったモヒート。ラム酒の味なんてまったく分からないほどにパクチーの味が勝っていた。しかもグラスの半分ぐらいパクチーが入っているので、お酒を飲んでいると言うよりもサラダを食べているのに近い感覚だった。
 どれも美味しかった。その事実に偽りはない。自宅でのパクチー栽培に失敗していたので、久しぶりの生パクチーだった。小食なぼくにしては貪るように葉っぱを食べ続けた。
 でも、ずっとパクチー味のものだけを食べ続けているとさすがに少し飽きてきた。食感が異なるだけで基本的にどれも同じ味。調理方法や味付けは異なるが、そんなことを凌駕するほどにパクチーの味は強い。
 胃をパクチーで満たし、食道の途中までパクチーを詰め込んだような気分だ。味に少し飽きを感じたが、大満足のひとときだった。
 帰りの電車の中で、ぼくはパクチー臭かったのではないだろうか?餃子や焼き肉でニンニクを食べまくった人の息が臭くなるのと同じように、ぼくの呼気はパクチー臭かったのではなかろうか?
 嫌いな人にとってはカメムシの臭いと同じぐらいに臭いと感じられるらしいパクチー。ぼくが帰りの混雑した電車の中で息をする度にカメムシのような臭いをまき散らしていた可能性は否定できない。ニンニクだったら心地良くはないが、ニンニクの臭いだと理解できる。でも、パクチーの臭いをパクチーだと判断できるのはパクチー好きだけだろう。嫌いな人からしてみれば、恐怖のカメムシ臭人間が横にいるようなものだ。きっと悪夢のような満員電車でのひとときとなったことだろう。