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ダンジョンのように

by 唐草 [2015/06/25]



 昼休み、ぼくは授業を終えてグーグーなる腹を抱えながら食堂へと向かった。食堂は、ぼくが授業をしている棟からはもっとも遠い建物にある。ちょうど大学の敷地の対角線上にある感じだ。お腹が空いた状態で向かうには、なかなかハードな距離。高低差もあるので、食前の軽い運動の域は越えている。不思議なダンジョンだったら餓死してもおかしくない行程だ。
 食堂の入っている建物の前まで来たら、入り口の自動ドアのところに人だかりができているのが目に入った。混雑しているときは券売機の前に長蛇の列ができることがある。今日は混雑に混雑が重なって建物の外まで行列ができてしまったのだろうか?だとしたら30分ぐらい待つことになる。行列ができる学食って言うと、さぞや美味しそうだと思ってしまいそうだが、実体は回転が悪いだけだ。
 自動ドア前の人々を見てみると、どうも様子がおかしい。列に並んでいるにしては妙に動き回っている。その動きも自動ドアの前を前後するような不可解な動きだ。
 近づきながら様子を見ていたら状況が理解出来た。
 どうやら自動ドアが開かなくなってしまったようだ。センサーの具合を確かめようと4人ぐらいの人が自動ドアの前で右往左往していた。
 そうか、ドアが開かないのか…。その事実を目の前にして狼狽えるようなぼくではない。
 食堂の入り口は、正面の自動ドアだけではない。実は、地下通路からの入り口もある。正面玄関が開かないのなら、裏口を使えば良いじゃないか。そう判断して、くるりと方向転換をした。
 ただ1つ問題がある。
 地下の裏口から入るには、遠回りをしなくてはならないのだ。
 まず、食堂の隣の棟の脇にひっそりとにある用務員用階段を通って地下駐車場に出る。地下駐車場の外周を通って別の棟の地下玄関に回る。守衛さんに軽く会釈をしつつ地下玄関をくぐり抜け、地下連絡口を通って食堂の棟まで戻る。人通りが少ないので省エネのために電気が消されている階段を登って地上に戻れば、そこは食堂の自動ドアの向こうだ。
 思わず「ゲームかよ!」と口ずさみそうになるやっかいな迂回経路を経て無事食堂にたどり着いた。
 その時には、すでに施設課の方が自動ドアの修理を始めていた。くそー、完全に骨折り損のくたびれもうけじゃないか。