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髪を切りそびれる

by 唐草 [2015/07/03]



 ネットで読んだ誰かの名言に「風呂に入る前に(入浴が)面倒だと思う事はあるけれど、風呂に入った後に(入浴が)面倒だったと感じることはない」という言葉がある。言い得て妙な言葉だ。面倒に感じていても、実際やってしまえばたいしたことではない。それどころか気持ちのいいことさえもある。国語のテストで作者の気持ちを想像する問題並に想像力を働かせれば、「目の前の困難さは、結果から考えれば取るに足らないことだ」と解釈できるのかもしれない。
 ぼくが風呂に入ることよりも面倒だと感じているのは散髪だ。髪を切りに行くのは、昔からどうしても好きになれない。行こう行こうと思ってもなかなか腰が上がらない。いつも行く店が、基本的に予約無しの床屋なので混雑状況が読めないことも拍車をかけている。
 ぼくが髪を切る決断をするのは、実害が発生してからだ。オシャレだとかイメチェンだとかそういう抽象的な理由で髪を切る決断はしない。肝心の実害だが、これは伸びに伸びた前髪が目を突いて視界に影響が出るという大きな問題のことを意味している。
 前に髪を切ったのがいつだか思い出せないのだが、たぶん3ヶ月ぐらい前だと思う。長期間髪を切りに行かなくて平気なようにバッサリ切ってもらった。だが、いよいよ限界に近づいてきた。前髪が容赦なく眼球を突いてくる。手ぬぐいを頭に巻いていなければ、目が痛くてモニターを見つめることが困難なほどだ。
 明日こそ髪を切りに行こう。
 昨日そう誓ったのだが、今日の雨がその思いを洗い流してしまった。歩いて行くにはちょっと遠いが、カッパを着て自転車で行くほどのことはない。雨なら店が空いているかもしれないが、ズボンの裾を濡らすほどのことでもない。せっかく固めた意志は、雨の前にあっさり敗れ去った。
 髪を切った後の爽快感はよく分かっている。でも、髪を切りに行く面倒さを考えるとどうしても体が動かない。