カレンダー

2024/03
     
30
31      

広告

Twitter

記事検索

ランダムボタン

忘れ物を取りに

by 唐草 [2016/06/17]



 昨日から言いしれぬ不安に襲われている。
 学校のロッカーに授業で使うiPadをしまったか記憶がないのだ。昨日授業が終わったときに教員室までiPadを持って帰ったことは、覚えている。
 でも、それをロッカーに入れた記憶が完全に無い。ロッカーの鍵を開けるためにロッカーの上にiPadを置いたままにしてしまったように思えてならない。不幸なことにロッカーにしまうものはたくさんあるので、しまったものが何だったのかがまったく思い出せない。
 高価なiPadを紛失してしまうことはお財布的にも辛い。でも、このiPadは研究室から借りているもの。iPadを失うという物理的・金銭的な問題だけでなく、預かったものを管理できないということで信用さえ失いかねない。もし、ロッカーにしまっていなかったら大問題に発展する可能性がある。
 次に学校へ行くのは、月曜日。いくら施錠された教員室とは言え、木曜の午後に放置したiPadが月曜の午後まで無事とは思えない。不埒な先生がいるかもしれないし、学務課に回収されてぼくの管理が甘いことが発覚してしまうかもしれない。
 なにより、金・土・日の週末の間iPadが無事かどうかを思い悩み続けることになる。これは精神衛生上良くない。心配性のぼくのことだ、月曜日には胃に穴が開いてしまう。
 という訳で、他の仕事をほっぽり出して授業もないのに学校へ行って確認することにした。仮に紛失していたとしても対応が早ければ誠意を示せるだろうという下心もある。
 教員室へ駆け込み、ドキドキしながらロッカーの鍵を開ける。
 するとそこには、ぼくの心配なんて露と知らぬいつものiPadがあった。完全に無意識のうちに閉まっていたようだ。よかった。
 この安心感はプライスレス。往復の電車賃と時間をかけた価値は十分にある。