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床がない

by 唐草 [2016/08/22]



 いつものようにダラダラと寝ていたら、爆音で目を覚ますこととなった。台風の雨音ではない。
 建築業者の朝は早い。台風が来ていたって関係ない。
 うかうかする間もなく我が家の解体が始まった。まぁ、解体といっても1階の内装だけ。ぼくの居住スペースのある2階部分はノータッチだ。
 けたたましい電動工具の駆動音が一日中鳴り響いている。鋸で何かを切る音と振動が2階にいても伝わってくる。硬いものが割れるような音もする。どんな道具で何を壊しているのかを音から想像することはできない。でも、確実に足の下では解体が進んでいる気配がする。
 午後5時頃に解体作業は終わった。音に怯えた猫は、結局作業中ずっと押入れに篭っていた。ぼくも自室に篭ったままだった。どんな具合で工事が進んでいるのかを全く見ないままだった。
 業者が撤収した後、家がどうなっているのかという好奇心を抑えることはできなかった。すかさず状況を確認に行った。
 リビングは床が剥がされていた。基礎の土がむき出しになっている。基礎は道路よりも深いので基礎の上に降りると半地下に降りたような妙な気分となった。窓が高いし、蛇口は頭の高さにある。イメージよりも広く見えるその空間は、もう自宅とは思えない。
 風呂場も完全に撤去されていた。すべてのタイルが剥がされ、バスタブもなくなっていた。リビング同様基礎が見えるほどに解体された風呂場だが、こちらは想像よりずっと狭く見えた。
 そして冷蔵庫は、玄関に鎮座している。
 長い間生活をしてきた我が家の見たことのない一面に驚きが隠せなかった。
 さて、これから3週間にわたって工事が続く。その期間は大学の夏休みなので、ぼくはずっと家にいる。きっと工事業者からは、ニートだと思われることだろう。