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初冠雪

by 唐草 [2016/10/26]



 今朝の空気は澄み渡っていた。昨晩の雨が、大気中の埃を洗い流したんだろう。早朝の駅からは、朝日に照らされた多摩の山並みがクッキリと見えていた。
 これなら富士山もよく見えることだろう。
 通勤時の小さな楽しみを胸に電車へ乗った。
 予想は的中した。いや、それ以上の結果だった。
 遠くにあるはずの富士山が、まるで近くの山のようにクッキリと見える。ただ、その姿は先週までの黒い塊とは違っていた。山頂にほんの少しだけ雪が被っていた。実にアンバランス。絵画や写真などで見慣れた雪を被った冬の富士山に比べると、雪の量が少なすぎるのだ。イメージの半分、いや1/3ぐらいの雪しかない。なんだか偽物の富士山のようだ。
 ついに富士山に雪が被る季節がやってきてしまったのか。いよいよ本格的な冬の到来である。日に日に朝起きるのがいやになっていくことだろう。
 職場に着いてからニュースを見ていたら、初冠雪の文字が目に飛び込んできた。なんと今日が富士山の初冠雪だったそうだ。
 初冠雪の日にタイミング良くその姿を見られるなんて朝からラッキーだった。雪は雪なんだけれども、初物と言われるとなんだか貴重に思えてしまうんだから人の考えなんて実に単純だ。とは言え、年に1回しかない初冠雪。1/365の確率だと考えるとやっぱりラッキーに思えてくる。
 これから次第に雪の量が増えていくことだろう。その変化を朝の小さな楽しみにする季節の幕開けである。