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さよなら、緑のMTB

by 唐草 [2017/03/06]



 先日、大きな決断をした。決断というのは、往々にして個人的な想いに対して下すもの。他の人が聞いてもさほど重要に聞こえない些細なことが、ある人には断腸の思いの果てに下した重大な決断だったりする。
 ぼくの下した決断は、自転車を手放すことだ。しかも、壊れた自転車だ。
 きっと多くの人が「壊れた自転車なんていうゴミを捨てることのどこが決断なんだ?」という素直な感想を抱くことだろう。
 今回手放した自転車は、ぼくが長年愛用していたマウンテンバイク。パーツを少しずつ交換しながら乗り続けてきた。その期間、実に二十余年。そんなに長く乗り継いできた自転車を手放すとなれば、かなりの覚悟が必要になる。
 それにマウンテンバイクは、各パーツがバラ売りされている。直そうと思えば、修理することも不可能のではないのだ。
 とは言うものの、やはり20年以上前のモデルなので互換性のある部品が手に入りにくくなってきている。一見問題無いように見えるフレームだって、小さなキズや錆が浮いている。それにどこかを直すとその影響で別の場所が壊れるという連鎖的な故障が相次いでいた。そして、昨年の4月にリアディレイラー(後輪に付いている変速機)が完全に壊れてしまった。
 この故障は致命的なものだった。ぼくが直せるレベルのものでは無いし、自転車屋へ持っていっても修理ではなく交換になるのでお値段もバカにならない。
 と言う訳で、修理を諦め廃車にすることにした。それが、去年の5月頃の話。
 その後、使えるパーツだけは回収しようとして一度自転車をばらした。ところが、要所要所にダメージがあり、パッキンが割れていたり、摩耗していたりと状態は芳しくなかった。結局、再利用できそうな部品はほとんど無かった。
 結局、バラバラのまま物置に放置されることとなった。
 でも、長年乗ってきた愛車なので手放せないでいた。この20年間で何千キロ乗ったことだろう。学生時代に乗りまくっていた頃、スピードメーターの累積距離が3000kmを越えていた時期もあった。もしかすると、1万キロに手が届くほどに走っていたのかもしれない。でも、それももうおしまい。機械だっていつかは壊れるもの。事故ってライダーもろとも廃車になるよりはずっといい終わり方。
 午前中に粗大ゴミ回収業者が来た。門のところに置いていた後輪のない自転車をひょいと担ぐとゴミ収集車へと放り込んでいた。そのまま、潰されていく自転車を見ていると想像していたよりも胸が痛んだ。ゴミ収集車の中に消えていくまで見ていられなかったので、そっと目を逸らしてお別れとなった。長いお役目ごくろうさま。今日までありがとう。