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21世紀の呪術

by 唐草 [2017/03/10]



 昨日、読んでいた雑誌(ナショナルジオグラフィック2016/12号)にプラシーボ効果に関する話が載っていた。医療分野の話は基礎知識が皆無なので十分に理解できたとは思えないのだが、それでも読み物としては楽しめた。
 ものすごく雑にまとめると「信じるものは救われるってのは、科学的に本当かもしれない」というお話。
 偽薬に関する研究が進んでいるらしい。実験では摂取した薬が偽薬だったり、手術が偽物だったとしても、効果を期待した被験者の脳では脳内物質が分泌されて痛みが緩和したりすることがあるらしい。実際には治った訳じゃなくて、痛みや苦痛を感じにくくなっているらしい。効果を期待して信じていると脳内物質が「期待の結果を作り出してくれるかもしれない」という研究が紹介されていた。
 ぼくは、この記事に賛成する知識も反対する知識もない。だから、そんな研究もされているんだなって記憶に留めるだけだ。
 もし、この研究が正しいのであれば人間って楽天的にできているんだなぁと思わざるを得ない。
 それともう一つ、呪術とかの行為も無駄でなかったのかもしれないと科学が認めることになる。これって興味深い展開だと思う。
 生け贄を捧げたり、聖地を巡礼しても怪我が治ったり、体内のウィルスが死ぬことはない。でも、治るって信じていると脳内物質がバンバン出て症状が緩和されることもあるらしい。科学的な治癒方法が存在しなかった時代は、縋るに十分に値した行為だったのかもしれない。だからこそ、呪術やら巡礼というものは、何百年も続いていたのだろうか?
 偽科学でホメオパシーというのがある。科学的に効果が期待できないのは明白だ。でも、余計なことを考えないで信じてしまえば脳内物質が出て楽になることもあるかもしれない。科学的にまったく効果がない行為が脳に与える影響が科学的に効果があることが分かったということなのかもしれない。
 ただ、これが事実だとすると偽科学が活気づいてしまう心配もある。「水素水はエンドルフィンを分泌させる」とか言い始めそうだ。風が吹けば桶屋が儲かるって言っているのと同じなんだけど、それを見破るのはとても難しい。
 科学の発展は、ときに物事の見方を変えてくれる。そこには、新しい発見や驚きが満ちあふれている。意味のない呪術だって科学的なアプローチがあるかもしれない。でも、油断すると口のうまい人間が、表面上の事実だけをかいつまんで巧妙な嘘を作り出してしまう。魔法のように見える十分に発達した科学が、すぐ側にある現代。何が本当で、何が嘘なのかを見極めることなんて、素人のぼくらにはもうできないように思えてきた。