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創作の化物

by 唐草 [2017/06/16]



 先日見たテレビ番組に漫画家の大友克洋さんが出演していた。都美術館でやっている『BABEL展』関連での出演だった。
 番組では「『AKIRA』で知られる漫画家の大友さん」というような紹介のされ方をしていた。やはり「大友克洋」といえば『AKIRA』なのか。大友さんは、多くのマンガを書いているし、何本もの映画制作に携わっている。それでも、代表作はやはり『AKIRA』で決まりなのだろう。
 『AKIRA』は、ぼくが今コレを打っている机のすぐ横にある本棚に全巻入っている。緻密すぎて文庫化できないせいか雑誌サイズの大判のままでで発売された6巻のマンガが本棚の多くのスペースを堂々と占有している。それ以外にも『童夢』だとか何冊かが、ぼくの本棚に収まっている。
 『AKIRA』は、まちがいなくおもしろいマンガだ。話の筋も、キャラクターの描写も、そして緻密な絵も、なにもかもが最上級のレベルでまとまっている。マンガだけでなく映画の『AKIRA』も、原作マンガと同様に高いクオリティーでまとめられた作品だと言うことは疑いの余地もない。
 日本だけでなく世界でも評価されている『AKIRA』。
 そして日本マンガの歴史を考えると大友克洋は、大きなターニングポイントを作った作家となるそうだ。大友前と大友後に区分できるほどに大きな影響を生み出したらしい。詳しいことはよく分からないが、今あるマンガの格闘シーンの基礎を生み出したとか。
 30年経っても色褪せない『AKIRA』という大きな足跡を残した大友克洋さん。ただ、逆の見方をすると『AKIRA』を越える作品を生み出せていないとも取れる。あれだけの技術と才能を持ち合わせる作家であっても、世界に影響を与える作品はひとつしか生み出せないものなのか…。
 その事実に気が付き、創作世界の厳しい現実を目の当たりにしたような気分になってしまった。
 この事実を踏まえて考えると宮崎駿という作家が、もはや化け物にしか見えなくなってしまう。前人未到の記録を自ら打ち立て、その記録を他人に破らせないうちに自分で打ち倒していく。当然のように記録を塗り替え続けてきたので、ぼくたちは感覚が麻痺してしまってその偉大さが理解できなくなっている。