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踊る梅干し

by 唐草 [2017/06/19]



 月曜日は、午後1時から授業。だから、昼食は学校で取ることにしている。普段は学食でしっかりと食べるのだけれども、今日は体調がイマイチだった。コンビニで買ったおにぎり2個で昼食を済ませることにした。
 今日買ったおにぎりは、赤飯おにぎりと海苔で巻かれていない梅おにぎり。どちらもぼくのお気に入りだ。赤飯おにぎりは、年を追うごとに小さくなっているように思えるが、それでも買ってしまう。
 まず、梅おにぎりから食べ始めた。この梅おにぎりは、おにぎりの中央に種を取った大きな梅干しが載っている。そして、ご飯には刻んだカリカリ梅が混ぜ込んである。柔らかい果肉の大きな梅干しと小粒のカリカリ小梅を同時に食べられるすばらしいおにぎりだ。梅好きのツボをよく押さえた商品である。
 ビニールを剥がして、おにぎりにがぶりと噛みついた。
 その時、赤い小さなものが飛んでいくのが目の端に映った。残念、刻まれたカリカリ小梅がぼくの口に入らず下へと落ちていったようだ。ぼくがおにぎりを食べているのは、教員の控え室。多くの先生が利用している部屋だ。早く回収しておかないと誰かが踏んだりしてしまって汚れてしまう。忘れる前に拾っておこう。
 おにぎりを机において、辺りを見回すと椅子の上に小梅の破片が落ちていた。よしよし、簡単に見つかったぞ。指で梅の欠片を摘もうとしたときだった。
 力の加減を誤ったのか、それとも梅の欠片に強い意志が宿っていたのかは分からないが、梅の欠片はぼくの指先から飛んで行ってしまった。そして、今度は確実に床へ落ちる放物線を描いて視野から消えた。
 早く拾わないと、今度こそ踏まれてしまう。踏みつぶされたら絨毯に赤いシミができてしまう。
 慌てて床を凝視した。そして、絶望することとなる。
 教員控え室の床に敷かれた絨毯の色が、完全にカリカリ小梅の色だったのだ。なんとなく赤系統の絨毯だとは認識していたが、まさか梅干しの色だとは考えたこともなかった。
 完全なる保護色である。落ちた梅干しを匿うために染められたとしか思えない色である。
 梅干しの欠片探しは難航した。床を這うようにして、どうにか求めていたものを探すことに成功した。周りの先生たちからは「あの人は何でおにぎりを食べながら床を這いずり回っているのだろう」と思われたに違いない。
 何もかも梅干し色の絨毯が悪い。