カレンダー

2024/04
 
21222324252627
282930    
       

広告

Twitter

記事検索

ランダムボタン

ガーデニング休暇

by 唐草 [2017/12/21]



 ぼくが担当している授業の責任者である先生から深刻そうな声で連絡があった。
 細かいことを全部省いて単純に結果だけを書くと、クビだってことらしい。まいったね、この年の瀬に来年度の契約が全部白紙になってしまうなんて。今から就活を行っても既に手遅れ。来年度の無職が約束されたものとなってしまった。
 これが、ぼくの不備によるものなら仕方がない。女子学生の足を舐めるような目つきで見ていたセクハラ行為だとか、学生の発表に対して罵詈雑言を浴びせかけて酷評したパワハラ行為とかを薄々自覚でもしたら裁判にされなかっただけマシだと思えていたかもしれない。
 でも、そんな後ろめたいことはしていない(とはいえ、この手の問題はぼくがどう思っているかよりも、相手がどう感じたかの方が重要なのでぼくの主観にあまり意味は無い)。
 不幸中の幸いだが、ぼくの契約が反故になった理由はセクハラでもパワハラでも、研究費の横領でもない。
 大学の規定で非常勤の5年以上の連続雇用は行わないと決定されたからである。要するに今年が満期だったらしい。そう言うことは、今年の4月ぐらいに宣告してもらわないと冗談じゃなく死活問題なのだが…。
 いや、ちょっと待て。非常勤の5年縛りは、数年前に廃止された法案じゃなかったか?5年間非常勤で働いたら正規雇用にしましょうという頭がお花畑の法案が可決施行された結果、5年後に全員クビになる現実が見えてきて撤廃されたはずじゃ無かったのか?それとも法とは関係なく、大学独自の決定なのか?
 ルール上は、ぼくをクビにせざるを得ない。ただ、ぼくが抜けると授業が回らなくなる。だから先生とルールの抜け穴を見つけて、仕事を続ける脱法策をあれこれ考えることとなった。
 6ヶ月以上の非雇用期間があれば、雇用期間がリセットされるというルールに着目した。そしてたどり着いたのが、半期の休業。ガーデニング休暇(※)的なものである。半年ぐらいなら仕事をしないでもどうにか生き延びることはできるので、妥協点としては悪くない。
 訳の分からん独自ルールのせいで、宣告無しに無職へ一直線。裁判もやむを得ないか。と思っていたら連絡が入った。
 事務が撤廃された古いルールに基づいて告知を出してしまっていたというとんでもない内容が届いた。これにて一件落着。ぼくの雇用は、予定通り継続となった。
 事務の中にぼくをクビにしたい人でもいるのではないかと疑いたくもなるミスである。

※ガーデニング休暇
 F1などでエンジニアが他チームへ移籍する際、元チームの情報流出を避けるために半年から1年程度休暇をあたえることになっている。この休暇が、ガーデニング休暇と呼ばれている。