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本の福袋の中身は

by 唐草 [2018/01/03]



 昨年末に地元の図書館で「本の福袋」というイベントが、ひっそりと開催されていた。数年前にどこかの図書館が中身が分からないようにした本を福袋と銘打って貸し出したイベントを行って以来、全国各地の図書館がマネをしているらしい。ついにぼくの地元の図書館まで本の福袋ブームがやってきた。いったい何年遅れのブーム到来だろうか。
 図書館には英字新聞で包まれた本が10セットほど置かれていた。既に福袋は大盛況で在庫わずかという賑わいは感じられない。どうも初めからごく少数しか用意していないような静かな雰囲気が漂っている。告知もないし、管理も大変だろうから10セット程度で十分なのだろう。
 全国津々浦々で実施されているイベントなので、ハッキリ言って目新しさはない。目新しさどころか、使い古されて手垢にまみれているような印象さえある。でも、アイディアとしては悪くない。普段だったら絶対に手にしないような本を読む機会に恵まれるかもしれない。と言う訳で1セット借りてみることにした。選んだのは一番大きい包み。A4版ぐらいのサイズだ。包みをよく見てみると大小2冊ぐらいの本が入っていそうだ。大きい版の本は絶対に小説ではないだろう。
 家に帰ってワクワクしながら包みを開いた。どんなものであれ包装紙を剥がす瞬間は楽しいものである。
 予想通り、2冊の本が出てきた。
 1冊は『点と線』。松本清張の代表作である。これが小さい方の本。
 もう1冊の大きいA4版の本は『松本清張地図帳』という妙な本だった。清張作品の舞台を古地図で理解するという変わった本だ。社会の教科書の副読本のような趣のあるマニアックな本だった。出版社は、地図を発行している帝国書院。
 ぼくの選んだ福袋は、『点と線』を地理的な理解をしながら楽しむセットだったらしい。
 『点と線』は2段組の小さな活字。時代を感じる版組である。まったく読む気が起きない。一方の地図帳は、松本清張作品なんて1つも読んだことがないのに意外に面白かった。地図が好きなので、ぼくの趣味の琴線に触れたらしい。あと、珍しく横書きの本だった。仕事で日本語横組みの誌面レイアウトを行うことが多いので、大いに参考になった。
 福袋を作った図書館司書の思惑からは大いに外れているのだろうけれど、ぼくはぼくなりの楽しみ方で福袋を活用することができた。