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墓場日和

by 唐草 [2018/01/09]



 天気予報によると今日は、季節外れの暖かさになるそうだ。予想最高気温は17℃。17℃といえば、春がすぐそこまでやってきている3月下旬ぐらいの温度である。なんでも北の方にできた巨大な低気圧があまりにも大きいため、南の暖かい空気を吸い寄せてしまうから気温が上がるらしい。雑にまとめると北が寒すぎるから、南が暖かいということになる。気候の常識を打ち破るような無茶苦茶な天候だ。
 とは言え、これはあくまで予想の話。実際のところ予想通りに暖かくなるかぼくは懐疑的だった。
 午後2時頃、家の中は寒いままだった。暖かさの気配などまるでない。室内には昨日までの冷たい空気が残っているからだ。では外はどうだろう?
 日当たりの良い南向きの窓を開けて、外の空気を胸一杯吸ってみた。
 空気は確かにぬるかった。ここ数日の刺すような冷たさは、どこにもない。でも、吹き荒れる南風に春を予感させる程までの暖かさは感じられなかった。
 ネットで近隣の温度を確認すると14℃と表示されていた。1月にしては暖かい。荒れる南風と冬らしくない雲の隙間から差す光が穏やかに街を温めているのだろう。
 ちょっとその辺をぶらつくには良い陽気である。風の強さが少し気になるが、家に引きこもっているのはもったいない。今日は絶好の墓場日和である。
 と言う訳で、颯爽と自転車に跨って近所の霊園までサイクリングすることにした。人の少ない霊園は、いつだって穏やか。陽気の良い日には、絶好のくつろぎ場所である。
 ただ、1つだけ気がかりなことがあった。
 どんな服装が今日の陽気にふさわしいのかということ。いくら暖かいからと言って春物では寒いだろう。でも、この季節にふさわしい完全防寒の化繊のダウンジャケットでは暑すぎるにちがいない。どちらがふさわしいか大いに悩んでしまった。
 凍えると体は動かなくなってしまう。一方、暑ければ脱ぐなり前を開ければいい。と言うことで、1月にふさわしいモコモコした出で立ちでサイクリングに向かった。40分ほど自転車を漕いで帰ってきたぼくは、まるで雨に打たれたかのように濡れていた。完全防寒ジャケットがサウナスーツのようにぼくに向かって牙を剥いたのである。大いに季節外れの暖かさを人一倍体験できたということにしよう。