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誰のための実写版

by 唐草 [2018/01/21]



 昨年公開されてファンからクソ映画の烙印を押されていたハリウッド実写版『ゴースト・イン・ザ・シェル』を見た。特にオリジナルである「攻殻機動隊」ファンからの評判が著しく悪かったので、見るつもりはなかった。でも、Amazonビデオでプライム会員向け無料公開作品になっていたので、怖いもの見たさで見ることにした。
 感想は、そうだなぁ、5つ星評価なら2.5を付けたいところだが小数点に対応してないから切り上げして星3つと言ったところだろうか。思っていたほどクソ映画ではなかった。ただ、なんだろう、「攻殻機動隊」じゃなくてもいいよねという感じが強い。むしろ、「攻殻機動隊」というブランドがなければ良くできたサイバーパンクだと思う。つまり、それは有名作品の設定をほとんど活かせていないと言うことでもある。
 何よりもファンが見ると混乱するような作りをしている点が残念である。ベースの話はマンガ原作に近い押井版『ゴースト・イン・ザ・シェル』と同じような流れなのに、敵の名前と設定がアニメ版の2期(SAC 2nd GIG)と同じになっている。ぼくのようなファンからすると「『人形使い』かと思ったら『個別の11人』でした」という感じ。肩すかしを食らうような印象が強い。いっそオリジナル展開の方が良かったのかもしれない。
 映画を見ていて強く感じたのは、「この監督は押井版『ゴースト・イン・ザ・シェル』が好きすぎるのではないか?」ということ。随所に類似したカットが挟み込まれている。映画内に出てくるマンションの名前が「アヴァロン」なのもオマージュだろう。
 映像としては、忠実にアニメの実写化を行ったと言えるだろう。でも、複数のアニメシリーズを切り貼りしたようなシナリオのせいで、原作に忠実な実写シーンもアニメとは異なる順番に出てくる。とにかく、元を知っていれば知っているほど分からなくなるという努力が報われない感じがする映画だった。
 最後になるが、作品のテーマが大きく変わってしまっている点も残念である。それも、正反対と言って良いほどの改変である。おかげで後味はスッキリするが、別作品じゃないかと言いたくもなる。
 オリジナルを知らない方が楽しめる実写版にどんな価値があるのだろうか?ぼくには分からない。