カレンダー

2018/01
 
   
       

広告

Twitter

記事検索

ランダムボタン

雪と歯医者

by 唐草 [2018/01/22]



 雪である。
 出勤しなければならない仕事は無い。暖かい部屋で鈍色の空から舞い落ちる雪を優雅に眺めて優雅な午後を過ごしたいところだ。
 でも、どうしても家から出かけなければならない用事があった。
 歯医者だ。
 幸いなことに虫歯の治療ではない。市の無料歯科検診を受けに歯医者まで行かなければならないのだ。
 なんで、よりによって今日なんだろう。警報が出るほどの雪が予想されている今日なんだろう。
 歯科検診の予約をしたのは、ずっと前のこと。1週間や2週間前なんてレベルではない。たしか、昨年の11月末ぐらいに予約をしたはず。2ヶ月先まで予約で一杯だったというわけではないのだが、ぼくのスケジュールの関係で(授業が終わってからが良かった)1月22日を選んだ。早起きをしたくなかったので、午後の診療が始まる15時を選んだ。日付も時間も全部自分で選んだのだ。
 その結果が、これだよ!
 ぼくが家を出た14時45分頃、街は既に白くなっていた。うっすら雪化粧なんてレベルではない。都心より2℃は寒い多摩の田舎なので、すでに10cmぐいらいは積もっていた。車が通ったところは雪がシャーベット状になって滑りやすい。転ばないように踏み跡のない新雪をギュッギュと踏みながら歯医者へと向かった。新雪を踏むぼくの顔が少し得意気だったことも記しておこう。
 大粒の雪が途切れることなく降ってくるので、透明のビニール傘は見る見る白い傘へと姿を変えていく。途中で数度雪を払ったが、それでも傘はすぐに白くなる。風に舞う雪を傘で防げない足下にも雪がついていた。ひどかったのは足下。長靴ではなく、スニーカーのような普段履く薄い靴を身につけていたので靴の中まで雪が入ってしまった。
 注意深く歩いていたので転ぶこと無かった。時々雪を払っていたので、雪だるまのようになることもなかった。それでも、歯医者までの道のりが、今までで一番長く感じられた。
 何度も言うが、なんでよりによって今日の予約を取ってしまったのだろう。2ヶ月先のピンポイントな天気なんて誰にも分からないが、あまりにも運の悪い選択である。