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河へ

by 唐草 [2018/05/04]



 趣味のプログラミングに集中し続けている今年のゴールデンウィーク。趣味に没頭しているのは楽しいけれど、せっかくの五月晴れなのに一日中PCの前に座っているのはもったいないと感じてもいる。何より椅子に座っているだけでは、刺激がないのだ。
 と言う訳で、今日もアドレナリンを求めてサイクリングに行くことにした。
 先日、久々に自転車に乗って10km程度走った。今日は、もっと遠くまで行こう!
 ぼくが遠くと言った場合、目的地は河である。ぼくの日常にとうとうと流れる川の姿はない。通勤電車の車窓から河を見ているのだけれども、電車の中からでは自然を目の当たりにしたという印象はない。高速で動く金属の箱から見る景色なんて、音も匂いもなにもない。ディスプレーの中の映像と大差ないのである。
 夏を思わせるような日射しの下、ややペースを抑えながら河を目指す。
 河へ向かう途中にある大きな神社ではお祭りが開催されていた。街頭には提灯が飾られ、大きな山車が申し訳なさそうに車道の端を進んでいた。この光景、何度も見た気がする。そうか、ぼくは毎年この時期に河を目指して自転車に乗っているのか。
 久しぶりに走る河への道は、ところどころ変化があった。一番残念なのは、昭和にタイムスリップしたかのような気分になれる横町が消えていたことだ。
 通り慣れたつもりの道の変化に一喜一憂している内に多摩川の土手にたどり着いた。いつもの場所から河川敷に降りようと考えていたぼくの計画は、煙に妨げられることとなった。土手の下は、バーベキューを楽しむ家族連れで埋め尽くされていた。バーベキュー場付近は、焼き肉屋の排気ダクトの近くのような脂が焦げる匂いに包まれていたし、涙が出てくるほど煙に包まれていた。
 とてもじゃないけれど、こんな煙の中では自然を満喫できない。数キロ走って穴場へと向かうことにした。獣道を抜けた先にある穴場は、期待通り人気がなかった。スタンドのないMTBをその辺にほっぽり出して、河原の砂の上に腰を下ろす。目の前の広い空と輝く水面を独り占めできる場所だ。街に近いので静けさはないけれど、風が河原の木々を揺らしているのを見ていると自然に包まれたような気分になる。ただただ、何もせずに景色を見ているだけで十分に非日常を感じられる。
 肉脂が焦げる煙に燻されているよりずっといい。自然を楽しむには、何もしないでいられる余裕が必要なのだ。