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カマボコの幻影

by 唐草 [2018/07/02]



 近所にイタリアンレストランがある。店構えから察するにたぶんチェーン店だと思うが、他の場所では見たことが無い。サイゼリアなんかに比べるとちょっとマイナーなチェーン店なのだろう。
 その店では、新商品が発売になるとノボリが立つ。イタリアンレストランなのにノボリを立ててしまうというセンスが、なんとも日本的である。しかし、ノボリをバカにしてはいけない。文字だけでなく料理の写真がプリントされたノボリなので、どんなメニューなのか一目で分かる優れ物なのだ。
 今日、風にはためく7月の新商品のノボリを見てぼくは驚きのあまり言葉を失った。
 なんとスパゲッティの上に紅カマボコのスライスが載っていたのだ。
 スパゲッティにカマボコ!
 麺の上にカマボコが載っていると、どんなものでもうどんに見えてしまう。恐ろしい食材である。
 とは言え、ゲテモノ感はない。スパゲッティは懐の広い食材だ。おおらかにも明太子と刻み海苔を受け入れ明太子スパゲッティという和風のメニューを成立させている。スパゲッティは「カマボコを載せるな!」なんて心の狭いことは言わないだろう。これがイタリアの鷹揚さなのだろう。アメリカで魔改造された寿司に憤る日本人との違いを感じずにはいられない。
 それにしてもこのイタリアンレストランは大胆なメニューを開発するものだ。カマボコの見た目が大好きなぼくでさえ、スパゲッティの上にカマボコを載せようと考えたことは一度だって無い。己の偏狭さと食品開発の飽くなき探求心をこの一皿に見た気がする。
 もう少しノボリに近づいて写真をよく見てみよう。
 ぼくが一歩踏み出すと、まるでぼくの気持ちを汲んでくれたかのように一陣の風がノボリのはためきを抑えて料理の全体像を見せてくれた。
 再びぼくの目にショッキングな光景が飛び込んできた。
 ぼくがカマボコだと認識していたのは、赤タマネギのスライスだったのだ。独創的な文化融合を感じさせてくれる料理なんてどこにも無かったのだ。風のいたずらが小洒落た食材をカマボコに見せていただけだったのだ。