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湯気上る街

by 唐草 [2018/08/03]



 この殺人的な暑さの日に仕事だったのだが、作業場所が空調が効きすぎるほど効いた地下室だったことは幸運だったと言えよう。猛暑のことを忘れ没頭していた作業を切り上げ地上に戻った時、日はすでに地平線付近まで沈んでいた。日の姿はないものの生命の危険を感じるほどの暑さは残されたままだった。
 突然、背後から轟いた雷鳴に驚き天を見上げると、うす暗くなっているにもかかわらず分厚い雲が空全体を覆っているのが分かった。この空模様は危険である。早々に帰宅した方が良いだろう。荷物をまとめて光のような速さで職場を後にした。
 電車に乗って家路を急ぐ間、家族から連絡があった。我が家の付近が豪雨らしい。連絡を受けた時ぼくがいたのは、目的地まで後一駅のところ。どうやら雨からは逃げ切れなかったようだ。「これは駅で雨宿り確定だな」とうんざりしながら電車を降りた。
 ところが、駅を出たら雨は既に小康状態になっていた。雨宿りをしている人なんて全然いない。傘を差さずに歩いている人も見受けられる程度だ。局所的な雨だったのだろうか?
 地面を見るとかなり濡れている。窪地には池という呼称が大げさではない程に立派な水たまりができている。どうも激烈な雨が駆け足で通り抜けていったようだ。
 ぼくはこの目で雨を見ることは無かった。でも、雨がとんでもないものを残したのを目撃することとなる。
 夕立は夏の日射しに熱せられた街を冷やしてくれる天然の打ち水だなんて話を小さい頃に聞いた記憶がある。でも、そんなものは完全に過去の話である。通り雨が去った街は、街全体がサウナ風呂になったのではないかと感じられる重く暑く湿った空気に包まれていた。体にまとわりつく湿り気をかき分けながら歩くようだった。非科学的であるが湿度160%と言うような不快さが街を覆っていた。
 しばらくするとあたりは霧に包まれ始めた。
 でも、霧を発生させるような冷たい空気はどこにも無い。相変わらずサウナ状態のままだ。霧の動きに目をこらすと疑いようもなく地面から立ち上っている。これは、霧じゃない。湯気だ。熱せられたアスファルトに降り注いだ雨が濛々と蒸発しているんだ。
 日が沈んだ午後7時半ぐらいだというのに、湯気が発生するほど街は暑いのか。冗談でも比喩でもなく蒸し焼きになってしまいそうである。