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自然のビート

by 唐草 [2018/08/13]



 すごい雨と雷だった。これが率直な感想である。これ以上の言葉はなにも出てこない。いつもだったら、無駄にこねくり回した比喩と修飾語を並べて雨の激しさを表現しようと試みるところだが、自然の猛威の前に孤軍奮闘して力尽きた今のぼくにその余裕は無い。
 我が家の1階の居間は、二重サッシになっているので防音効果は抜群である。ちょっとの雨の音なんてまるで聞こえ無い。聞こえなさすぎて雨に気づかず洗濯物を濡らしてしまったこともあるほどに静かなのだ。
 でも、今日のゲリラ豪雨の前にはなすすべもなかった。壁に打ち付ける雨の音も天を裂くように轟く雷の音も二重サッシを易々と通り抜けてきた。その事実からも雨の激しさを実感できていた。
 雷のピークが過ぎた頃だろう、軽快でリズミカルな音が聞こえてきた。ダンスミュージック顔負けのかなり早いテンポで「タッタッタッタ」とシンプルなビートを刻んでいた。なんの音だ?音の正体を見極めようと部屋の中を見回してみる。
 音の正体はシンプルだった。なんと二重サッシの間に水滴が垂れていたのだ。ようするに雨漏りである。
 2年前の夏のリフォームで新たに設置した窓枠から雨漏りかよ。なんてこった。
 内側の窓を開けて床に雑巾を置く。小気味良く響いていたビートは雑巾に吸い込まれていった。だが、みるみる雑巾が濡れていく。雫も収まる様子が無い。雑巾だけでは防衛力が足り無い。
 風呂場から湯汲み桶を持ってきて窓枠に置いた。すると茶色く濁った水がどんどん溜まっていく。
 一体どこから水が漏れているのだろう。水滴が落ちてくる場所を確認すると、ちょうどサッシを固定するネジのある場所だった。ネジ穴を伝って水がやってきているようだ。ネジの上には小さな天窓がある。天窓を開けると内側のサッシと外側のサッシの間に水が溜まっていた。どうも、外壁を伝った水が天窓の隙間から室内に入って、最終的にネジ穴経由で床にこぼれていたようである。ピタゴラ装置顔負けの複雑な経路である。
 この家に暮らして四半世紀以上経過しているが、雨漏りを経験するのは初めてである。ここのところ日本中で記録的な豪雨が降っている。今日の雨が、数十年に一度の豪雨だったから雨漏りをしたのだろうか?残念ながらそうは思えない。多分、我が家の経年劣化が主要な原因だろう。厄介なことが起きる前に手を打つ必要がありそうだ。