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みんな台風が悪い!

by 唐草 [2018/09/05]



 昨日の台風の猛威は、記録的にも凄まじかったし、メディアを通して見る被害の姿も記憶に無いほどだった。SNSの発達でピンポイントで発生する災害の瞬間の記録を目にすることができるようになったおかげで、背筋に緊張が走るような映像をいくつも見ることとなった。被災者目線で撮られた生々しい映像は、テレビの台風中継とは全く違う緊張感に満ちていた。
 ぼくが暮らす多摩地区は、台風の端がかすめただけだった。それでも電車が止まったり、屋根が落ちたりと小さな台風が直撃したときと同じような被害が起こっていた。ぼく自身は、職場のちょっと遅れた帰宅命令のせいで混雑には巻き込まれたが、別段の被害には巻き込まれていなかった。
 少なくとも今朝目覚めるまでは、何事もなく無事に朝を迎えられたと思っていた。
 でも、全然そんなことはなかった。
 朝になって気がついた損失があった。昨日から新シーズンが始まる海外ドラマを見損ねていたのだ!あんなに楽しみにしていたシーズン第1話を見損ねるなんて!ショックだ・・・。
 昨晩、吹き荒れる風にテンションが高ぶってしまったせいだ。雨戸を締め切っているのに風の音が聞こえた。何か金属でできた物が転がるような音が夜の街に響いていた。そうこうしているうちに消防車のサイレンが聞こえてきて、我が家のすぐ裏手で止まった。きっと吹き荒れる風が引き起こした非日常な出来事が起きているはずだ。野次馬根性は危険察知本能の現れだという話を聞いてから堂々と野次馬根性を発揮するようになったぼくは、サイレンの正体を見極めようと雨戸を開けて首を伸ばした。しかし、音の出処は建物の影で、そこで何が起きているのかは見えなかった。ぼくの目に映ったのは、止まった車のフロントガラスに映り込む赤色灯の反射だけだった。
 この出来事は、台風でハイテンションになっているぼくの好奇心を刺激してテンションを更に高ぶらせてしまった。ドラマを見ようとしていたことなんてすっかりと忘れてしまうほどにだ。
 そして、夜が明けた。
 朝起きるなりドラマのことを思い出しぼくの中には、楽しみを取りこぼしたという喪失感に近い感情が生まれた。いろいろ書いたが、結局の所ぼくが忘れただけに過ぎない。でも、その否を認めたくはない。そうだ、みんな台風が悪い。