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伝統の定番ネタ

by 唐草 [2018/09/15]



 今日、ダラダラとtwitterで話題になっているツイートまとめを見ていたら、既視感のあるツイートが目に止まった。それは「メールの署名欄に記号でモールス信号を書いて仕事の愚痴をやり取りした」というようなことをtwitter受けの良さそうな文体と装飾語で140字にまとめたものだった。「いいね」のために頭をフル回転させて書いたような、いいかにも拡散しそうな魅力的なツイートだった。
 ぼくは、この内容に強い既視感を覚えた。転載だろうか?ちょっと気になったので検索をしてみた。
 出てきたのは、このツイートが事実なのか、それとも「いいね」狙いの創作、今で言うところの嘘松なのかを議論している話題ばかりだった。転載だったらこんな議論にならず「パクリだ!」と鬼の首を取ったよう大騒ぎすることだろう。そうなっていないところを見ると、創作だとしても初出の可能性が高い。
 でも、ぼくにはそうは思えなかった。件のツイートと同じような発想をどこかで読んだことがあるような気がしてならないのだ。でも、どこで読んだのかさっぱり思い出せない。記憶がうまくつながらないもどかしさは、足の裏がかゆいときのようなムズムズとした落ち着きの無さをぼくに与えた。
 ベッドの上で立て膝を付いて座りながら腕を組んで考える。いつでも検索できるようにタブレットは腹の上に置いてある。脳の中では活発に何らかの物質の活発なやり取りがあるのだろうが、ぼくにそれを自覚するすべはない。難しい顔をしたまま時間だけが過ぎていく。
 閃きは、前触れもなくやってきた。
 「乱歩だ!江戸川乱歩の短編だ!」思わず声に出しそうになってしまった。
 高校生の時に読んだ江戸川乱歩の全集に掲載されていた、わりと初期のころの短編に似た話があったはずだ。誰も見ていないのにきっとドヤ顔に近い表情でタブレットを掴んで、検索をかけたことだろう。
 ぼくが必死に思い出そうとしていたのは、『算盤が恋を語る話』という短編だった。ミステリーでもホラーでもない、ある意味乱歩らしくない作品である。大まかなあらすじは、こんな感じだ。
 奥手で陰気な男が、職場の女性に告白をしたいと考える。でも直接言う勇気がないので、女性の机の算盤の珠を動かして告白の暗号を仕掛ける。反応がなくても何度も何度も暗号を仕掛け続ける。ある日、男の算盤に返事のメッセージが。それは、女性からの返事なのか?それとも偶然の悪戯なのか?
 こんな話である。完全に拡散したツイートと同じ構造である。
 ちなみに『算盤が恋を語る話』は、大正14年の作品。約90年前の作品だ。着想は、今でも通じるものなんだなぁ。