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食パンの法則が乱れる

by 唐草 [2018/09/16]



 だいぶ前の記事に「ブドウパンのレーズンの量が減ったように見える」というケチくさい記事を書いた。パン屋の企業努力に対して「消費者を欺く陰湿な実質値上げだ!」とか声を荒げたものだ。
 しかし、慣れというのは恐ろしい。初めはあんなにスカスカに見えていたのに、何度か食べているうちになんの違和感もなくなってしまった。頭もお腹も空っぽのままで「ブドウパン美味しいね」とか言っている始末である。
 だが、今日見た新しいブドウパンの姿は、明らかにぼくの記憶の中にあるブドウパンと異なっていた。レーズンの量という分かりにくい変化ではない。もっと露骨な変化が目の前にあった。
 パンが細くなっていたのだ。目の迷いではない。明らかに細い。1割、いや2割ぐらい細くなっていた。細くなったせいで、一瞬だけパンが縦に長くなったのではないかと錯覚してしまうほど形が変わっていた。
 山型の食パン、いわゆるイングリッシュブレッドの縦横比ってある種のルールでもあるかのように似通っている。きっとパン焼き窯のサイズとか型のサイズとか、ポンド法で量るパン生地の量とかのいくつもの伝統的な理由が重なって、目に馴染んだ縦横比のパンが作られているのだろう。おかげで、ぼくたちの心の中には、食パンのイメージが明確に出来上がっている。それは、きっと「しょくぱんまん」の顔と似通った比率だろう。
 もし、しょくぱんまんの顔が2割も細くなったどう見えるか想像して欲しい。きっと偽物にしか見えないはずだ。アンパンマンだって敵と間違えてパンチをお見舞いしてしまうかもしれない。
 ビニール袋に入った細長いブドウパンは、なにか別のパンにしか見えない。食べるために一枚手にとったのだが、その細長さが見知らぬパンにしか見えない。明らかにぼくの認知は、手に持ったパン的なものを食パンの仲間だと認めることを拒んでいた。いっそのこと「ドイツのバイエルン地方伝統の特別なパンなんだよ」とか言われたほうが、脳が混乱しないで済みそうである。
 細くなるだけでこうも見た目が変わるとは、正直驚きである。
 なお、パンの味は変わらなかった。確かにいつものブドウパンであった。ただ皮肉なことに、パンが小さくなったことで相対的にブドウの密度が上がったように見えていた。パンの大きさやレーズンの量は変えられても、レーズンの大きさを変えることはできないからね。