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キルスイッチ

by 唐草 [2018/09/22]



 直面した瞬間は胃が痛くなるほど重大そうに見えたけれども、蓋を開けてみたら実にお粗末で笑ってしまうような原因だった。そんなベタな喜劇のようなことが起こり得るのか。それとも喜劇は、所詮フィクションでしか無いのか。
 仮にそんな喜劇が自分の身の回りで起こっても、オチを知るまで喜劇だったとは気がつけない。だから、現実では厄介事に巻き込まれると、自分は大風に吹かれている葉っぱのように大きく振り回される悲劇の主人公だと勘違いしてしまう。
 昨晩からちょっとした厄介事に巻き込まれていた。解決した今だから自信を持って言えるけれど、これは喜劇に分類すべき出来事だった。ベタだけれども王道なオチが、ぼくたちを待っていたのだ。オチにたどり着くまでのぼくを含めた登場人物の慌てふためく様もオチを知っているのならただの笑い話である。今、思い出しても笑えてしまう。でも、渦中にいるときは笑う余裕はなかった。一度寝たら8時間は起きないこのぼくが、6時間で目が覚めても二度寝できない程度には緊張していたのだから。
 昨晩遅くから職場の2番目に重要なサーバ落ちていた。遠隔でログインを試みたところ、"Unreachable"と表示された。接続に失敗したときのメッセージはいくつかあるのだが、"Unreachable"はかなり深刻なエラーである。ソフトウェア的な原因でなく、ハードウェア的な要因によるエラーである可能性が極めて高いことを意味する。
 分かりやすく書くと、LANケーブルが抜けた場合とか、PCが勝手にシャットダウンしてしまった場合ということ。オンラインでは絶対に直せないので、サーバ室に直接乗り込んでスイッチを押したりケーブルを引っ張ったりしなければ復旧することはできない。
 普通、LANケーブルが勝手に抜けることはない。つまり、高い確率でPCの電源が切れてしまったと類推できる。では、なぜ電源が切れるのか?これは、圧倒的にハードの故障の可能性が高い。電源やメモリーのどこかが、目に見えないサイズで物理的に壊れたと考えるのが正しいことを経験的に学んできた。
 休日返上で職場へと急いだ。
 サーバ室には笑撃の光景が広がていた。なんと、サーバに電源を供給しているマルチタップの電源が切れていたのだ。誰だ、サーバ室に節電スイッチ付きの延長ケーブルを導入したのは!ハードの故障でもなんでもなく、純粋に電源が抜けたいただけだった。大騒ぎするまでもない単純な事故。コンセントのスイッチをONにして、サーバの電源スイッチを押したらすべてが元に戻った。
 昔、アメリカで掃除のおばちゃんが箒の柄でサーバの電源スイッチを押してしまったという事故があったそうだ。それ以来、サーバの電源スイッチは小さくて押しにくい形状になったそうだ。今回止まってしまったサーバ機も押しにくい場所に電源スイッチがあった。でも、まさかマルチタップの方に罠があるなんて。なんとも喜劇的である。
 ただ気になるのは、誰もいないはずの深夜のサーバ室で、突如マルチタップの電源が切れたという事実。一体、誰が電源を切ってしまったのだろう?