カレンダー

2018/01
 
   
       

広告

Twitter

記事検索

ランダムボタン

未だ残る爪痕

by 唐草 [2018/10/09]



 猛烈な風とともに台風24号が駆け抜けてから1週間以上経った。ぼくの住む関東の被害は、ここ何年かでもっとも大きかったように記憶している。人生史上ナンバーワン(ワーストと言うべきか?)の台風だったことになる。
 大きな災害が起きるとTVニュースのインタビューで「こんなの生まれて初めての経験です」と言っている被災者の映像がよく流れる。そういう映像を見るたびに「マスコミ受けの良いこと言っちゃって、この人は」とか冷めた目を向けていた。でも、今ならインタビューを受けた人の気持ちもよく分かる。倒木に道を塞がれたり、屋根が飛ばされたアパートを見たのは、ぼくだって初めてだった。
 台風の去った次の日にお互いの被災状況を武勇伝のように語り合っていたことは、ここにも書いた。しばらくの間、台風24号は話題の中心をかっさらっていた。でも、それも長くは続かなかった。各所で多くの人々が不断の努力を続けた結果、あと言う間に日常が戻ってきた。
 そう信じていたのだが、ちょっと横に目を向けるとまだまだ傷跡が残っていた。
 今日、気分転換にいつもの公園へと寄った。散歩目的と言うより息抜きである。
 公園も一見するといつもどおりだ。季節を感じさせるコスモスの花が満開を迎えていた。群生するオレンジ色のコスモスの花が、太陽の光を浴びて少しうるさいほどに自己主張をしていた。まさに秋の1コマと言った具合である。
 でも、それは日当たりの良い公園のメインストリートの話。木の陰が濃い湿っぽいエリアに目を向けると台風の傷跡がたくさん残っていた。数本の桜の老木が根本から引きちぎられたかのように倒れていた。そのうちの1本はフェンスに激突して、金属製のフェンスを交通事故現場のようになぎ倒していた。大きな桜の木は、未だに撤去されず倒れたまま地面に陰を落としている。枝葉はまだ活き活きとしているが、再び立つことはあるのだろうか?根が痛々しくちぎれているので、あとは枯れるのを待つだけなのかもしれない。春に花をつけた姿をよく知っているので、なんとも痛々しい。
 また、公園のいたるところに冬を迎える山小屋を思わせる薪の山があった。当然、薪ストーブのための燃料ではない。回収が間に合わないので、折れた枝や幹を適当なサイズに切って野積みしているのだ。一冬越せそうなほどの薪の山を見ていると、どれだけの木々がダメージを負ったのかがよく分かる。
 公園のように優先度の低いエリアには、いまだ台風の爪痕がくっきりと残っている。でも、それを見るまで台風のことなんてすっかり忘れていた。わずか1週間で遠い過去の記憶となっていたのだ。防災経験を次に活かすなんて高等なマネはぼくにはできそうにない。

※今回の写真は、台風24号の被害とは無関係。