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適切なタイミング

by 唐草 [2018/10/15]



 今日のお昼は、かき揚げうどんだった。ここのところ寒くなってきたので、吸い寄せられるかのように温かい麺類を選んでしまう。うどんはオールシーズンの食べ物だけれども、やは本領を発揮するのはこれからの寒い季節である。
 かき揚げうどんは、伝統ある組み合わせだろう。先日ぼくを悩ませたワンタン麺よりも歴史がありそうな気がする。日本の文化に根付いているので、カツカレーを目にしたときに感じる男子中学生の胃袋のことだけを考えたというような貪欲さもない。あるべきものが適切な位置に収まっているどっしりとした安定感がある。
 そんな伝統に基づく安定感を目の前にしているにも関わらず、ぼくは今日もどんぶりを目の前にして頭を抱えていた。
 麺つゆの上に浮かんだ天ぷらを食べるベストなタイミングっていつなのだろう?
 テーブルに出されてすぐ天ぷらを頬張れば、揚げたてサクサクの天ぷらを楽しめる。だが、それだと天ぷらの衣に麺つゆが染み込んでいない。ただ天ぷら単品を食べているのと変わりない。これでは天ぷらと麺類が奏でるハーモニーを楽しめない。また、食べてい時間の大半を麺しか入っていないどんぶりを見て過ごすことになる。あたかも素うどんしか食べられない困窮した状態に陥ったかのようである。
 最後の最後まで天ぷらを残しておくと麺つゆをたっぷりと吸った状態となる。これぞまさに天ぷらと麺類が調和した味である。天ぷらの油が、麺つゆにコクを加えている点も良い。だが、この状態だと天ぷらはもはや形を保てていない。かき揚げだったら、上げる前のように人参やゴボウ、小エビが分離してしまっている。特に悲惨なのはえび天だ。完全に衣が取れてしまって、むきエビが悲しく浮いているだけになってしまう。こんな状態になってしまうんだったら、はじめから天かすたっぷりのたぬきそばを頼んでおけばいい。
 はじめに食べても終わりに食べても一長一短である。どちらが良いのかは好みが分かれることだろう。ぼくはどちらの良さも認めるし、どちらにも欠点があることも分かっている。だからこそ迷ってしまうのだ。
 途中で食べるという選択肢もあるだろう。でも、天ぷらの状態は刻一刻と変化していく。結果としてどっちつかずの中途半端なものを食べることになってしまうのではないかと危惧している。
 今日もどうすべきか迷っているうちにかき揚げはドンドン麺つゆを吸って崩壊していってしまった。美味しいから良いのだけれども、優柔不断さからなし崩し的に「最後の天ぷら」に至っている自分が情けない。
 そう考えると、どのタイミングで食べても味の変わらないキツネうどんって偉大だな。