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完全に一致

by 唐草 [2018/10/18]



 今朝、マンガの中でしか見ないような状況に陥ってしまった。もし誰かにその姿を見られていたら汚物を見るような冷たい眼差しを向けられていたに違いない。
 ことが起こったのは、今朝の8時半ごろ。職場のデスクで朝食のおにぎり(お赤飯と昆布)を食べ終えて、ムーミンパパの大きなマグカップでお白湯を飲んでいたときだった。空いていた左手でPCを操作しようとしたときのことだった。
 体の右にあるトラックボールを左手で操作しようと腕を不自然に伸ばしたのがいけなかったのか、それともマグカップから目を離しモニターを見ながらお湯を飲もうとしたのがいけなかったのか、はたまたその両方が重なったことがいけなかったのか、理由は定かではないが、ぼくを不幸が襲った。
 飲んでいたお湯が気管に入り込んでしまったのだ。
 あとは抗えない生理現象が起こるだけである。ぼくは、末期の結核患者のように盛大に咳き込んでしまった。
 咳き込んだ時、ぼくの口は満水状態だった。しかもマグカップに残ったお湯を一気に飲み干そうとカップを大きく傾けていた。そんな状態で咽ればどうなるかは容易に想像ができる。
 手で口を抑えるよりも早く口の中に含んでいたお湯をすべて吹き出した。最後の抵抗として口を固く結ぼうとした結果、口から吹き出したお湯はまるで火吹き芸の達人が口に含んだアルコールを噴霧するときのような勢いだった。口から吹き出した霧状のお湯は、デスクの上でオシャレに鎮座するiMacのモニター目掛けて飛んでいった。27インチの広大なモニターは、まるで雨の日に走る車のフロントガラスのような有様になった。モニターまで届かなかったお湯は、キーボードの隙間に溜まっていた。まるでキーが浮いているかのようなちょっとした水溜りにさえなっていた。
 だが、不幸はこれで終わらない。焦ったぼくは、マグカップを握った右手を大きく振ってしまった。その結果、マグカップに残っていた水はぼくのズボンの右膝を盛大に濡らし、それだけでは飽き足らずに硬い事務椅子の座面まで濡らした。濡れたのがズボンの中央ではなかったことだけが救いである。
 立ち上がってみると床まで濡れていた。椅子から滴り落ちる水の流れと濡れた服を見ると、漏らしたようにしか見えない。いかなる弁明も信じてもらえないような状態であった。
 ネットの表現で「モニターに向けてコーヒー吹いた」という大笑いしたときの表現がある。奇しくもあれを実践した朝となった。しかし、ぼくの顔に笑顔はなかった。うんざりとした表情でずぶ濡れになったデスク周りを拭くだけだった。