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右手が痛い

by 唐草 [2018/10/21]



 朝目が覚めたら右手が痛かった。まるで寝ている間に右手だけすり替えられたのではと疑ってしまうほどに体との一体感がなかった。内側に小さな鋲がいくつも生えている分厚いゴム手袋をはめられているようだった。
 目立った外傷はなにもない。いつもどおり血色が悪く骨ばった手がそこにあるだけだ。
 この右手の違和感は極度の筋肉痛だろう。なにせ心当たりがある。男子が右手だけを酷使することなんていくつもない。ぼくがアクティブなスポーツマンだったらボーリングとか野球とかで手を痛めたという可能性も考慮する必要があったかもしれない。ぼくはそういうタイプとは真逆である。カーテンを締め切った薄暗い部屋でPCの前に一日中腰を下ろしたままの人間である。自室にこもりきっていたぼくが、楽しんでいたことなんて数えるまでもない。
 昨日のぼくがPCの前で一日楽しんでいたのは、マインスイーパーである。
 まるで季節性の発作のように定期的にぼくを襲うマインスイーパー熱。今年のゴールデンウィークの時以来の襲来である。昨日はWindows 8以降に搭載されているアドベンチャーモードでずっと遊んでいた。
 マインスイーパーは単純だが奥の深いゲームである。一度熱中してしまうとなかなか抜け出せなくなる。特にアドベンチャーモードは無限に続くステージ制なのでやめ時を見つけるのが難しい。ライフ制なので数度ミスしても平気だし、お助けアイテムもあるのでそう簡単にゲームオーバーになることはない。洞窟探検をモチーフにしたアドベンチャーモードは無間地獄へと至る死の回廊そのものなのである。
 マインスイーパー歴が無駄に長いので基本定石は頭の中にある。「121」のパターンなんかは脊髄反射で開くことができる。あまりにも反射的に開けてしまうので、ときに「なんでここがセーフだったんだろう?」と首をかしげることさえある。
 今は数字だけでは一箇所に定まらないパターンをこじ開けるのを楽しんでいる。「もしここに爆弾があったら矛盾が起きないか?」ということを考えながらマスを開いていくのが一番スリリングで楽しい瞬間だ。
 スリルを求めて何時間もトラックボールを操り続けていた。最後には右手がトラックールに固着していそうなほどに手が緊張していた。これが筋肉痛の原因である。マインスイーパー熱が冷めるまでしばらく右手が自分のものではない感覚に悩まされることだろう。