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脳内マップの罠

by 唐草 [2018/10/29]



 今日は、ちょっと寄り道して出勤した。裁量労働制で雇用されているのをいいことに寄り道して出勤することも少なくない。大抵は駅ビルで買い物というパターン。通勤経路上で私用を済ませる一石二鳥な選択である。
 でも、今日は違った。最寄り駅とは異なる方向にある店へ寄ってから出勤しようと企んでいた。とは言え、自転車圏内なので順調に済めば30分程度で済む些細な用事である。
 家を出るときにいつもとは反対方向に自転車を漕ぎ出すのは妙な感覚である。これが通勤のついでだという事をついつい忘れそうになってしまう。
 ぼくは移動する前に大まかな経路図を頭の中に思い描く。正確な道路地図というよりもチェックポイントを列挙したリストのようなものである。
 寄り道の目的地とゴールの駅をイメージして経路を作っていく。今日行く店へ寄る機会は少ないが、通り慣れた道の組み合わせに過ぎない。Googleマップで検索するよりもすばやく経路をはじき出した。
 ぼくがはじき出した経路は、店で買い物を済ませたら少し西へ走って、私鉄の路線沿いに南下して駅の西にある駐輪場を利用するという経路だった。「思ったより遠回りになるな」というのがはじき出した経路への素直な感想だった。
 お店で買物は、想定通りの時間で済んだ。さあ、駅へ向かおう。
 私鉄の線路を目指して自転車を漕ぎ出した。だが、200mぐらい進んだところでぼくは自分の座標を見失ってしまった。
 なんと、すでに渡ったつもりになっていた太い街道が目の前に現れたのである。
 おかしい!なんでこの道がここにあるんだ?認知症ドライバーのようの逆走をしでかしたわけではない。方角はあっている。
 自転車を止めて頭を抱えてしまった。
 ぼくは何を勘違いしたんだ?もう一度、経路を計算し直した。
 どうもぼくは、市役所に寄るときの経路を思い浮かべていたようだ。たしかに寄った店は、途中まで市役所への道と同じだ。
 家から店の道は完璧。家から駅への道も完璧。家から市役所の道も完璧。市役所から駅への道も完璧。なのに途中まで経路が似ているからと言って、なん店か駅への道を勘違いしてしまったのだろうか。
 ぼくは方向感覚に自信がある。初めての土地でも迷うことはない。旅先であえて地図に頼らず探検するのを趣味にするぐらいの自信である。それなのに近所の道を勘違いしたことに大きなショックを受けている。
 どうやら頭の中の近所の地図は、正確な地形図とは異なるものなのだろう。よく使うところが最適されて無駄が省かれているような気がする。最適化の代償として意外なところに盲点があるようだ。ゲームだったら雲がかかったままになっているような場所が点在しているのかもしれない。
 初めに感じた遠回りだと言う直感は、経路ミスを告げるゴーストの囁きだったのかもしれない。