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ヘビーな朝食

by 唐草 [2018/12/11]



 今朝はいつもと逆方向の電車に乗った。もちろん寝ぼけてポカをやってしまった訳ではない。年に数度あるかないかの激レアな業務が舞い込んできたせいだ。
 ここ半年ぐらいずっと山の方にしか足を運んでいなかった。高尾山を筆頭に多摩の山々もいいものである。でも、都会の魅力にはかなわない。自然のほうが懐が深いかもしれないが、都市のほうが多様性にあふれている。ぼくはインドア派なのでどうしても都市の方に目を向けてしまう。
 秋葉原での仕事の契約を解除して以来、東京の中央に背を向ける日々が続いていた。意図的に背けているわけでもないのだけれども、とにかく縁がなくなってしまった。このまま多摩の地に骨を埋めることになっても構わないのだが、生活圏が狭くなったようにも感じていた。
 そこへ舞い込んだ別の地でのレアな業務。久々に乗る上り電車には、本物の通勤ラッシュがあった。この不愉快さが懐かしくもある。電車はドンドン進んでいく。いつしか東京の中央を通り越して隣県が近いぐらいのエリアまで進んでいた。結局、きらびやかな街の中心地は通り過ぎるだけとなってしまった。
 初めて降り立った某駅。早めに着いてコンビニでパンでも買って朝食にしようと考えていた。だが、鉄道遅延と不案内が重なった結果、優雅な朝食タイムどころかパンを加えて駅前をダッシュする時間さえ残されていなかった。その結果、腹をグーグー鳴らしながらお偉いさん方から一方的なプレッシャーを受けながら難しい話をするはめになってしまった。
 とは言うものの、今、仕事のことを思い出しても「頼むから大きな音で腹が鳴らないでくれ」と天に祈っていた記憶しかない。
 結局、食べそこねた朝食と空腹を訴える胃の叫び声のことだけを考えている間に仕事は終わった。何を話していたのかよく覚えていないが、会議室に「ぐぐ〜」と間抜けな音を響かせる大失態はしないですんだ。この事実が、ぼくにとってはいちばん重要である。
 仕事自体は午前中で片付いた。時間は、ちょうどお昼どきを迎えていた。
 昼食に誘われたので、その界隈で評判のトンカツ屋へと行くこととなった。が、紆余曲折を経て別のトンカツ屋で食事をとることになったのだが、これは別の話。
 ぼく以外の方々は、昼食としてトンカツを食べていたのだろう。だが、ぼくにとって目の前にあるトンカツは今日最初の食事である。これって、朝食だと言っていいのだろうか?まだギリギリ11時台だ。寝坊したときの朝食と同じ時間であるとも言える。
 だから声を大にして言おう。「今日の朝食はトンカツだった!」と。