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32bitの影

by 唐草 [2018/12/20]



 遙か昔、まだ20世紀だった頃の話をしよう。ぼくはニンテンドー64の登場を目の当たりにして確信した。PCのCPUが32bitから64bitに切り替わる日は近いし、変わる時はこの黒いゲーム機が世に出た時のように一夜にしてドラスティックに変わるものだと。アーキテクチャの変更は、大地を切り裂く地溝帯のように明確で不可逆なものになるに違いない。
 赤い帽子の配管工に物理法則に反するジャンプをさせて喜ぶ少年は、眼をキラキラと輝かせながらそう信じていた。
 だが、そんな劇的な変化はやってこなかった。PCのCPUが64bit主体になるのはそれから10年以上先の話だし、移り変わりも穏やかだった。32bit互換機能のおかげで、まるで温水と冷水が静かに混ざっていくように境界がぼやけた変化が数年にわたって続くことになった。こんなにも穏やかなアーキテクチャシフトでは、シフトしていることに気がつく事さえ困難である。
 2018年の現在を見回すとどうだろう。PCのCPUはすべて64bitだし、スマホのCPUでさえ64bitとなっている。穏やかな変化は既に終わり、x86もARMもみんな64bitに変わっていた。身の回りはすべて64bitである。今となっては、レトロ界隈以外で32bitを探すのが難しいほどである。そんな時代だからこそ、ぼくはミスを犯してしまった。
 ここ数日、ファミコン的な感じでリセットボタンを押しながらだと起動できることが判明したぼくのオンボロMac proのことを度々書いている。仕事用Macとしての役目は既に残っていないことも書いた。でも、一度起動すれば順調に動く4コアXEONマシンを放置するのは宝の持ち腐れである。
 そこでぼくは考えた。Mac proの適切な余生とはなんなのか?そしてひとつの結論にたどり着いた。
 Macは他にもあるからWindowsにしてしまおう。
 元々デュアルブートでWindows 7が入っていた。これをWindows 10にアップデートして最新の環境にしよう。Apple的には屈辱かもしれないが、それがぼくにとって最も利用価値のある選択だと確信していた。
 1年前にWindows 10への無償アップデートは終了しているが、実は今でも問題無くできる。アップデートツールを落として、パパッとアップデートを行った。
 その結果、誕生したのが6GBのメモリーの内2GBしか認識してくれない32bit版Windows 10マシンである。検証用に32bit環境を作っていたのを完全に失念していた。それに32bit版のWindows 10が配布されているなんて考えてもいなかった。ぼくの思い込みが、最高に使えないWindowsマシンを生み出したのである。