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〇〇より団子

by 唐草 [2018/12/21]



 ここのところずっと団子を食べたいと感じていた。いや、この表現だと生ぬるい。団子に飢えていたと書いたほうが正確だろう。
 「団子なんてコンビニでも買えるじゃん」という意見もあるだろう。でも、団子に強いこだわりがあるぼくからすれば、コンビニのパック入り団子なんて串に刺さった別のものでしか無い。誠心誠意作っているであろうメーカーには申し訳ないが、あれは団子の形をしたまがい物だ。ぼくは断じて団子だとは認めない。
 ぼくが団子に求めるものは2つ。
 1つ目は餅の柔らかさと粘り気のバランスである。コンビニの団子は機械で成形しているので、どうしても粘り気が物足りない。餅というよりも、しっかりした白玉という感じである。
 2つ目は焼いた香ばしさである。餅自体が焦げていることはもちろんのことだが、焦がし醤油の焼団子だとなお良い。鼻に抜ける燻った香りが大人な雰囲気を感じさせてくれる。コンビニの団子だと焦げ目はついていても色だけ。さながら焼き豆腐の焼き色のような見た目だけである。スモーキーな香りなどどこにもない。
 これがぼくの痛いほどの団子への愛である。
 最寄り駅にとても美味しい団子を売っている団子屋がある。地元では屋号をいうだけで団子屋だと通じるほど有名で人気のある店だ。でも、気取ったところが無いのがいい。きっと昭和の頃からずっと変わらずに営業しているのだろう。ぼくもだいぶ前から贔屓にしている。
 平日は每日利用する最寄り駅にあるのだが、残念なことに滅多に買うことができない。だからと言って、不定期営業の幻の店というわけでもない。
 定休日は月曜と火曜。これで平日5日の内2日が潰れる。水曜と木曜は、ぼくの朝が早いので開店前に店の前を通ることになる。帰りなら寄れるかと淡い期待を抱くが、地元のジジババを相手にしているので大抵の場合午後4時には売り切れで店じまいしている。午前だけの仕事でもない限り絶対に寄れない。遅出の金曜日だけが平日唯一のチャンスなのだが、遅出故に駅から遠い駐輪場を利用することになる。そのせいで、店の前を通ることがなくなってしまう。団子を買いたければ回り道が必要になる。つまり、団子のために家を早く出るか、遅刻を覚悟するしか無いのである。で、土日は通勤がないので駅に向かうことがない。
 というわけで、まるでぼくを避けているかのように寄りにくい店なのだ。地元の気取らない店なのに「ちょっと寄っていこう」という軽い気持ちで寄れない悲しさ。でも、団子に飢えた今日のぼくは違った。団子への情熱がすべてを上回ったのである。そう、遅刻より団子である。