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監督官の密かな愉しみ

by 唐草 [2019/01/20]



 昨日、これ見よがしに「言いたいけど言えないんです」とアピールした秘密のお仕事の正体を明らかにしよう。山のようにヒントを書き連ねたので、賢明なる読者の皆様はすでに予想できているに違いない。
 この2日間、ぼくはセンター試験の監督官をやっていた。それも補助員という一番楽な仕事だ。しゃべりもしないし、時間をコントロールすることもない。カンニングなどの不正行為がないか見張っているだけの簡単なお仕事である。
 ただ、センター試験の監督業務はとても嫌われている。本などを持ち込むことができないので、60分ないし80分間退屈との戦いになるからだ。全受験生に知っておいてほしいことがある。監督官が部屋を巡回しているのは、不正行為を疑っているからではない。座っているだけだと退屈で寝てしまいそうなので歩いているのだ。そして、受験生からは見えない教室の奥でストレッチとかをして目を覚ましている。監督官だって人間なのだ。
 退屈で拷問のようだと悪い評判ばかり聞かされていた監督官業務だったが、ぼくはけっこう楽しめた。普段から無為な人生を送っているので半日ぐらい何もできない時間があっても特に気にならないからだろう。
 では、監督官から見た試験についてちょっとだけ書いておこう。
 試験会場を表現する文学的な表現に「部屋には、ただ鉛筆が滑る静かな音だけが響いていた」というようなものがある。でも、この表現は少なくともマークシート方式のセンター試験では当てはまらない。教壇付近に立っていると聞こえてくるのは、問題冊子のページをめくる音ばかり。バサッ、バサッと結構うるさい。耳を澄まさない限り鉛筆の音なんて聞こえてこない。先に挙げたありがちな表現は受験生の主観的な感覚でしかない。
 問題が受験生にとって簡単か難しいかもすぐわかる。簡単な教科だと持ち時間の半分ぐらいで全問終えて暇そうにしている受験生が結構いるし、終了間際は多く人の手が止まっているので会場は静か。でも、難しい科目、今年だと数学1なんかは終了時間まで手が動き続けていた。前に立っていると受験生たちの一挙一動から、問題を見ていなくても難易度を類推することができる。まさに神の視点だ。
 私物をほとんど持ち込めないので退屈してしまいがちな試験会場。でも、興味の持ちようによっては驚きに満ちた部屋ともいえる。初日は受験番号末尾の英字のルールを計算で求めていたら試験時間はあっという間に過ぎていった。2日目は、人気文房具ランキングを作っていたら今の流行りが見えてきた。マークシート専用消しゴムなんて便利なものがあるなんて知らなかったし、鉛筆削りは"K`Zool"とかいうオヤジギャグみたいなネーミングセンスの製品が一番人気だった。鉛筆では、"uni"を使っている高級志向な人が数人いたが、デッサン用の"Hi-uni"を使っている美術畑の人はさすがにいなかった。
 大きなトラブルがなかったので、こんなにも楽しみながら監督業務をこなすことができた。朝5時起きはちょっと辛いけど、来年もやってもいいかも。