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ヨガの誤解

by 唐草 [2019/02/16]



 「雀百まで踊り忘れず」とか「三つ子の魂百まで」という諺がある。小さい頃に身に付けたことは一生ついて回るというというような意味だったと記憶している。この諺を初めて知ったのは、中学受験の勉強に明け暮れていた小学6年生の時。英単語を覚えるように意味を理解せずに、ただの文字情報として脳に書き込んだ。覚えた当時は、どんな場面で使うかもわからなかった。12歳の子供なんて、まだまだ三つ子のようなものだったのだから仕方のない話である。
 無駄に歳を重ねた今なら、諺の意味を実体験を通して理解できている。小さい頃に記憶したことは、まるで脳に縫い付けられているかのようにしっかりと記憶されている。ただ、厄介なことに間違った記憶もべったりと脳にこびりついてしまっている。
 両手でも数えられないほどたくさんの間違った記憶や知識がぼくの頭の中には詰まっているが、その中でも最近よく顔を覗かせてくる記憶がある。
 それが「ヨガ」だ。
 通勤の道すがらにある女性向けのヨガ教室のおしゃれな看板を見るたびに間違った記憶が再生されてしまう。ぼくと同世代だったら、ぼくと同じ誤解が脳内にあるに違いない。
 今でこそメジャーなエクササイズのひとつとなったヨガ。でも、ぼくが小さい頃はまだまだマイナーだったはず。きっとインドの神秘主義(とそれを促進するための葉っぱ)が好きな人ぐらいしかヨガなんて言葉を耳にしたことがなかったに違いない。少なくとも小学生が街中で見かける言葉ではなかった。
 ぼくが初めてヨガという言葉を知ったのは、ゲーム『ストリートファイター2』だ。そう、つまりダルシムである。
 ヨガのパワーで戦うトリッキーなファイターであるダルシム。「ヨガファイア」と唱えて口から火を噴くし、強パンチで腕が伸びるし、強キックで足が伸びる。しまいにはテレポートまでしてしまう。これがヨガを知ったきっかけである。ヨガを極めても手足が伸びることはないだろうと幼心に思ったが、ヨガとは火を噴いたりする曲芸的なことはするものだと信じて疑わなかった。今だったらレイシストだと指さされてしまうような曲解されたステレオタイプのインド人像が、ぼくのヨガ原体験なのである。
 だから、「ホットヨガ」の看板を見るたびに笑ってしまう。間違っていることは重々承知しているのだけれども、頭の奥の方で「ヨガファイア」とか「ヨガフレイム」の掛け声が聞こえてしまうのだ。もう、この誤解は一生解けることはないだろう。