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黒いドーナッツ

by 唐草 [2019/03/12]



 ひょんなことから、好きなバンドが新しいアルバムを発売することを知った。音楽の趣味は14歳ぐらいに決まるという話を(ドラマ『クリミナルマインド』の劇中でDr.リードが語っているのを)聞いたことがある。これは、ぼくの体験に合致する納得のできる見解である。
 ぼくが中学生の時、全盛期だったこともあり世間にはJ-POPが溢れていた。キャッチーナメロディーと分かりやすい歌詞は、同世代の間で感染力の強い伝染病が蔓延するように圧倒的な浸透力で流行していた。でも、ぼくはまったく好きになれなかった。中二病的に斜に構えて流行り物を拒否していたのではなくて、本当に魅力が理解できずどれを聞いても同じようにしか聞こえなかった(事実作曲者は一人だったし)。
 流行りについていけないぼくは、友人たちとの会話の輪に参加せずひとり洋ゲー(と言っても日本語にローカライズされたもの)で遊んでいた。あるゲームのBGMを耳にした瞬間、鳥肌が立った。なんていう衝撃の出会いがあればドラマチックなのだが、そこまでのドラマはなかった。でも、気が付いたら頭の中に1つの曲がこびりついていた。そして、そのバンドのCDを購入する決意を固めた。
 中学生にとって3,000円は大きな出費であるが、それはすべての始まりであった。その一歩が、おっさんになった今日まで続いている。
 新アルバムを購入しようとAmazonを開いた。輸入盤と日本盤が並んでいる。曲名がカタカナで表記されている日本盤を買うような真似はしない。ファンだからこそオリジナルである輸入盤を買うのだ。
 早速、輸入盤をクリックした。
 すると価格が3,600円と表記されている。えっ、高すぎない?2枚組?日本盤より1,000円も高いの?
 これは一体何事か?
 冷静に画面の表示を見たらLP盤が選択されていた。まさかのアナログレコードである。クラブでの需要があるジャンルなのでLPがデフォルトなのね。
 DL版にするかCDにするか迷ってAmazonに来たのに、まさかレコードを買いそうになるなんて夢にも思っていなかった。すでに音楽市場としてのCD市場は消滅寸前である。それよりずっと前に消えかかったLP市場が、ニッチな需要で細々ながら今日まで生きながらえている。もしかしたら、音楽市場で最後に笑うのはCDでもDL版でもなくてLPなのかもしれない。
 これを機にLPプレーヤーでも買おうかな。スマホに取り込めないからダメか。