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非実在猫疑惑

by 唐草 [2019/03/15]



 たぶん今は人類史史上最大の猫ブームなのだろう。一過性の猫ブームは度々起こっていたが、どれも局所的なものだった。しかし、SNS+動画共有によって猫ブームは世界的なムーブメントとなった。あの柔らかくしなやかで予想不能な生き物の魅力は、静止画だけでは絶対に理解できない。動画配信技術の発展で、その魅力が世界中の知るところとなった。
 今日もSNSで多くの猫の画像が飛び交っている。あたかも猫画像をアップするのが飼い主の責務であるかのような量である。いったいどれぐらいの量の猫データが世界を駆け巡っているのだろう?深い太平洋の底に横たわる海底ケーブルの中をデジタル化された猫が走り回っているかと思うと、なんとも微笑ましいものがある。
 ぼくも猫とともに暮らしているひとりだ。だがぼくは猫の画像をSNSにアップしたことはない。それどころか、写真撮影すらほとんどしていない。とは言え、SNSで猫と暮らしていることをつぶやいたことはある。猫と暮らしていることを隠しているつもりはない。
 先日、交流のあるフォロワーさんに会ったときにある疑問をぶつけられた。
「なんで、猫の画像をアップしないの?」
 実に素朴な疑問である。ぼくの回答もシンプルなものだった。
「うちの猫、カメラがキライだから」
 これで会話は終わった。もっとコミュ力のある人間だったら、「実は写真があるんだ」とか言ってスマホの写真ギャラリーを見せたりして会話に花を咲かせたりするのかもしれない。
 その後ふと思ったのだが、ひょっとして彼女はぼくが猫と暮らしていることを疑っているのではないだろうか?
 確かに写真の一枚も見せないのは怪しい。しかも猫の関する言動がウソっぽいのも事実である。ぼくの語録を眺めると「人生の中で猫と暮らしていない期間が半年もあった」とか「玄関を開けたびにボロボロの野良猫がいるんで、ドンドン増えていった」、「今は、5匹いる」とかそんな話ばかりである。かわいい話とか一切出てこない。他の人と話があまりにも違うので、疑われても仕方がない。
 写真の一枚でもアップすれば疑惑は解けるかもしれないが、それをするつもりはない。なぜ、アップしないのか?
 保護した姉妹猫がスマホを見ると怯えるのは事実(捨てた前の飼い主が強引に写真を撮っていたせいだろう)だが、それは主たる理由ではない。
 逆にぼくから、みなさんへ聞きたいことがある。
「弟や妹の写真をSNSにアップしますか?」
 ぼくは、生まれたときから猫とともに暮らしてきた。たぶんぼくの価値観の大半は猫に教わったものでできている。ぼくにとって猫はペットではない。兄弟だ。だから、写真をアップしようなんて間違っても思わないし、撮影しようという気持ちにもならないのである。