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四月の雪

by 唐草 [2019/04/11]



 昨日は、とても桜が満開を迎えた季節とは信じられないほど寒かった。ぼくが仕事をしている9階の窓からは、風に舞う桜吹雪ではなく、ふわふわとした雪がハラハラと舞っているのが見えた。さすが山の中の職場である。なお、1階に降りて外に出てみると空から落ちてくるのは雪ではなく雨粒だった。30m程度の差ではあるが、地上付近のほうがまだ温かいということだろう。
 真冬の完全防寒装備はすでにタンスの奥にしまわれている。手元に残された数少ない防寒着を重ね合わせて寒さに対抗したが、みぞれ混じりの冷たい雨の前ではあまりにも無力だった。濡れて重くなった靴は、氷の塊のようだった。
 体の芯まで冷えてしまった昨日の雪だが、「四月の雪」という字面が醸し出す雰囲気は悪くないと思う。ただ事実を述べているだけなのだが、どことなく詩的な響きがあるように感じられる。
 何が良いのだろう?
 「四月」という語は、暖かく花盛りな春を連想させる明るく賑やかで生き生きとした言葉だ。対して「雪」という言葉は、柔らかさはあるが静謐で冷たく、時に死の気配すら感じさせる言葉だ。そう考えると「四月の雪」というのは相反する言葉が並んでいることになる。相反する言葉が並ぶことで非日常な想像力がかき立てられ、どことなく詩的で奥深い言葉に感じられるのかもしれない。
 試しに「一月の雪」から「十二月の雪」までを考えてみよう。「一月の雪」なんて当たり前すぎて何の感想も湧かない。天気予報を見ているようである。それに比べて「八月の雪」というのはなかなか意味深な感じがする。小説のタイトルとかにありそうだ。やはり、相反する言葉が並ぶとそこにポエムの種が生まれるようである。
 こんな感じで相反する言葉の組み合わせを考えてみよう。きっと、ハッと目が醒めるような言葉の組み合わせがあるに違いない。
 「一月の花火」。ただの新年記念パーティーである。
 「寒い夏」。冷夏のことだ。米不足が心配になるだけ。
 「溶けないかき氷」。食品サンプルの話だろうか?
 ダメだ。考えれば考えるほどスケール感が小さくなっていくし、普通にあることしか思いつかない。やはり「雪」のように大自然を相手にするスケール感の大きな言葉の組み合わせが重要なのだろう。また、形容詞+名詞の形よりも2つの名詞を「の」で繋いだほうが雰囲気がある。形容詞を使うとただの説明になってしまう。
 じゃあ、これならどうだ!
 「氷の夏」「ピンクの雪」
 ダメだ。思考がかき氷から離れられなくなってしまった。