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魔女の秘薬

by 唐草 [2019/05/15]



 ゴールデンウィーク前にぎっくり腰を患って以来、どうも腰の調子が悪い。ただでさえ1日中座りっぱなしでPCと格闘するだけの毎日なので腰への負担は避けられない。これでは治るものもなかなか治らない。日常生活に影響があるような痛みは消えたけれど、腰の様子を伺いながら丁寧に体を動かす日々が続いている。
 一日活動を続けると腰が痛くなってしまうので、お風呂上がりに関節痛の痛み止めとして有名な市販薬である『バンテリン』を塗る日々が続いていた。今までに関節を痛めてしまったときは、いつもこの塗り薬が強い味方となってぼくを助けてくれていた。今回も全面的な信頼をおいて腰に塗り込んでいた。
 痛み止めは、かゆみ止めなんかと違って即効性はない。翌朝、なんとなく痛みが治まっているような気がする程度。だからクスリをちゃんと塗れたかどうかは、本質的な成分ではない清涼感だけが頼りである。まんべんなくクスリを塗れると腰だけが南極にいるような冷涼感に包まれる。
 それにしても、今回の腰痛はしつこい。発症から3週間経っているのに未だに違和感が消えず、体を急に動かすと腰回りの神経が危険信号を発してくる。まるで、毎晩塗っているバンテリンが全く効いていないかのようである。
 いや、「効いていないかのよう」なのではなくて、本当に「効いていない」のではないだろうか?長患いが感情をネガティブにするのだろうか?ぼくは長年頼ってきたクスリを疑いだした。
 一度でも疑い出すとすべてが怪しく見えてくる。
 改めてチューブから出したバンテリンを眺めてみると、ぼくがイメージしていた色とはだいぶ違うように見えた。ぼくのイメージではグレープフルーツの果肉のような淡い半透明の黄色だった。でも、ぼくの指の上に絞り出された軟膏には、透明感なんてなかったし、色は木の枝のような茶色だった。禍々しい風合いは、芋虫や爬虫類を釜で煮込んだ魔女の秘薬と言った風であった。
 これは疑心暗鬼が、ぼくに見せている幻ではない。明らかに何かがおかしい。
 慌ててチューブに書かれた消費期限を確認してみる。そこには2012.9という数字が刻まれていた。約7年前の日付である。食べ物の消費期限だったら腐っているどころの騒ぎでは済まない期限オーバである。たぶん、土に還っているだろう。
 密閉性の良いチューブの中に保管されていたのでバンテリンのジェルが固まったり蒸発したりすることはなかった。でも、患部の痛みを和らげるインドメタシンは化学変化をして別の成分になってしまっていたのだろう。つまり、ぼくはスースーするだけの軟膏を3週間も塗り続けていたのだ。疑ってごめんなさい。ぼくが悪かったです。