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隠された虹を追って

by 唐草 [2019/05/28]



 お昼に食べたヘビーな焼肉定食のせいで午後2時過ぎのぼくの血流の大半は胃袋に奪われていた。意識は遠のき、世界はフワフワと揺れていた。
 ぼくを現実へと呼び戻したのは、「雨が降っている」の一言だった。
 自分の席から窓の奥に焦点をあわせると、寝ぼけ眼でもハッキリと雨粒の動きを見て取ることができた。天気予報では夜からの雨だと告げていた。今日雨が降るという大枠での予想としては大正解と言えるかもしれないが、降り始めの時間が6時間ぐらいずれていることを考えると予報的中だと認めたくはない。
 空は、雨降りにしては明るく見える。ピンポイントなにわか雨なのだろうか?雨の状況を知りたかったぼくは、窓に近づいて天を仰ぐようなマネはしなかった。デスクに置かれたPCで検索を始めたのである。目の前の自然現象を知ろうというのに、自分の感覚ではなく、ネットに頼るというのがなんとも現代的なアプローチである。目で見て手で触れられる現実の自然よりも、仮想世界の情報の方が、ぼくにとってのリアルなのかもしれない。
 『XRAIN』を見ても、『東京アメッシュ』を見ても状況は同じである。南からの雨雲がまだらに雨を注いでいる。降られるかは運次第と言った読みにくい空模様だということがよく分かった。
 『東京アメッシュ』を見た時、天気予報とはまったく関係のないことが気になった。全域表示のボタンを押したら長野県から虹が出ているような画面になってしまったのだ。
 なんだこれ?まったく意味が分からない。
 ブラウザのウインドウサイズを広げてみたら、さらに虹が出てきた。Web開発者の性というか職業的好奇心が、虹の正体を突き止めろと訴えてくる。調べようとしていた天気のことなんてすっかり忘れて、『東京アメッシュ』の画面を構築しているHTMLを読み解き始めていた。
 分析の結果、『東京アメッシュ』の地図の背後には、東京都下水道局のマスコットキャラクターである「アースくん」が描かれた巨大な画像が置かれていることが判明した。ぼくが見た長野県から伸びる虹は、アースくんが乗っている虹の切れ端だったようである。
 それにしても、ほとんど表示されない背景に巨大な画像(1703px x 600px)が、なんで置いてあるのだろう?約180KBの容量とは言え、何万人もの人が閲覧するWebページだということを考えればバカにできない転送負荷となる。デザイン的にも無意味だし、HTML的にも無意味。
 アースくん、君は地図の裏に隠れていったい何をしているんだ?ぼくにはさっぱり理解できないよ。