カレンダー

2019/06
      
26272829
30      

広告

Twitter

記事検索

ランダムボタン

疑いのエレベーター

by 唐草 [2019/05/30]



 職場のビルには、2基のエレベーターが設置されている。制御システムが古いせいか昇降の動きに融通が利かなすぎる。よく言えば省エネ重視で無駄な動きをしていないとも言えるが、待っているとそんな地球にやさしい考え方はできなくなる。なんで動いていないエレベーターがあるのに最上階から降りてくるエレベーターを待たねばならないんだ!と待つのがキライなぼくはイライラを募らせてしまう。
 今日、いつものようにエレベーターに乗った時、妙な現象に遭遇した。エレベーターの扉が途中までしまったものの、まるで何かを挟んでしまったときのように再び扉が開きだしたのだ。もちろん挟まれた人も物もない。乗っている人数も少ないので重量オーバーギリギリだったということもない。
 これは1度きりの現象ではなかった。止まっていたフロアを出発するまでに3回ほど扉の開閉を繰り返していた。初めは誰かが操作パネルのボタンを誤操作しているのかと思ったが、誰もボタンを押している風ではなかった。ぼくが周囲の人を疑ったように、乗っていた3人がお互いを疑いの目で見つめ合っていた。その目には「自分はボタンを押していないぞ」という強い意志が輝いていた。むろん、ぼくも同じである。
 いったい何が起きているのだろう?心霊の仕業だとキャッキャと騒いでも良さそうな挙動かもしれないが、もっとはるかにまずい問題なのではないかという悪い予感がした。
 扉が勝手に開閉するということは、扉のセンサーに異常が発生している可能性がある。本当に何かが挟まっても反応しなかったり、扉がまだ閉じていないのに昇降し始める可能性だってある。一度疑い始めると、すべてが怪しく見えてくる。フロアで止まっているときもいつもより揺れているような気がする。停止位置も上下方向に少しズレているような気がする。実測値があるわけでもないし、毎日つぶさに観察しているわけでもない。でも、なんかいつもと違う気がする。
 操作パネルをよく見てみると、上昇ランプが不規則に点滅していた。目の迷いではない。これは、エレベーターの電圧が不安定になっているということなのだろうか?エレベーター内を照らす蛍光灯は、いつものように辛気臭い光を放っているだけで変わりないように見える。だが、扉の不調を考えると電気的な問題が発生しているという可能性を否定するのが難しくなってしまう。
 ちょっとした不具合が、すべてを怪しく見せて行く。目的階につくまでの時間がいつも以上に長く感じられた。この箱がぼくの棺桶になるのだろうか?そんなのはイヤだ。帰りは階段で降りようと強く心に誓うのだった。