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最後のCD

by 唐草 [2019/07/01]



 3月の中頃に間違えてレコードを買いそうになったという話を書いた。ぼくが中学生の頃から好きな音楽のジャンルは、機材の関係上レコードが好まれている。それはプロに限った話だ。ぼくのように静かに聞くだけならデジタル音源の方が都合がいい。だから、輸入盤のCDを購入することにした。
 本もゲームもダウンロード版しか買っていないぼくが、音楽だけはCDで買うというのは妙な話かもしれない。これには訳がある。ぼくはコピープロテクトのないデジタルデータが欲しいのだ。本やゲームでコピープロテクトの無いものを得ようとしたら不正コピーしか無い。一方、音楽は古くからCDというコピープロテクトのない形式での販売が続いている。同じデジタルデータを購入するなら何度でも使い回せるコピープロテクト無しの方が使い勝手が良い。と言うわけで、ぼくは音楽だけはCDを支持しているのである。
 3月に購入を決意したCDの発売日は4月末だった。発売日からすでに2ヶ月が経過した。だが、ぼくの手元にCDは届いていない。発送延期が続きまくっている。月末に発送延期のメールが届くのが、恒例行事のようにさえなっている。
 ぼくが注文したCDは、イギリスからの輸入盤だ。イギリスと日本の間には、貿易を巡るトラブルもない。それなのにCDが一向に届かないのはどうしてなのだろうか?
 日本の音楽産業は、未だにCDへの依存が大きい旧世代のビジネスモデルを引きずっている。このスタイルは、もう日本だけらしい。世界の潮流を見るとダウンロード版が、CDの2倍以上販売されているのが実情だ。だから、原産国のイギリス国内には、日本に輸出できるほどまとまった量のCDが無いのだろう。これが発送延期の理由だと予想している。
 時代の変化のせいで新たなサウンドに触れられず悶々とする日々が続いている。
 ぼくに残された選択肢は3つ。1つ目は、輸入盤の2倍近い価格の国内盤を買うという日本らしいアプローチ。楽曲名がカタカナ表記で我慢ならないほどダサいが、今すぐに買える。2つ目は、ダウンロード版に移行するという手段。コピープロテクトへ屈するということを意味する。3つ目は、このまま待つという消極的なアプローチだ。
 3つの内どれがベストな選択なのかは、容易に判断できない。でも、3つ目では無いことは薄々気がついている。しかし、予約をキャンセルした瞬間に入荷が決まったら悔しいという極めて消極的な理由で2ヶ月以上待ち続けているので、もう引き下がることはできないのである。
 きっと、このCDがぼくの買う最後のCDになるのだろう。生まれて初めて自分で買ったCDもこのグループだった。なにか運命的なものを感じてしまう。