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爪痕を映す鏡

by 唐草 [2019/09/17]



 先週関東の南側を襲った台風の爪痕は、まだクッキリと残っているようだ。メディアを通してしか知らないが、千葉の停電は未だに全面復旧から程遠いらしい。こんなにも影響が色濃く深刻に残る台風は、ぼくの人生の中でも初めてだ。これだけの痕跡を残せる程に猛烈で凶暴な台風が上陸したのなら、暗闇の中でぼくが吹き荒れる風の音と家をも揺さぶる風圧に翻弄されて眠りにつけなかったのも頷ける。ぼくが臆病になったのでは無いようだ。
 台風が去った後、ぼくは普段どおりの朝を迎えることができた。停電もなければ、屋根が吹き飛ばされたり窓ガラスが割れていたなんてこともなかった。今回ばかりは1階の屋根の上に載っているエアコンの室外機が飛ばされるのではないかと本気で心配していたので、無事に朝を迎えられたことに安堵したものだ。
 街の様子は、ぱっと見たところ普段どおりだった。しかし、地面に目をやると青い葉をつけた枝が大量に飛散していた。台風で枝が折れるのはいつものことだが、今回はその量が倍近いように思えた。
 日が経つにつれ台風の爪痕はどんどん消えていった。でも、1週間経過しても完全に痕跡が消えたわけではない。
 近くの川沿いに植わる桜の木は、いまだ裂かれたように割れたままである。寿命を迎えようとしているソメイヨシノの老木には、先週の風はあまりにも暴力的だったのだろう。多くの倒木があるせいか、通行に影響のない木は放置されているのだろう。1週間も痛々しい姿のままである。数年前の大風の翌日に理解したのだが、樹木の不自然な枝ぶりのは強風の犠牲の証なのだ。
 もうひとつ台風の威力を物語る傷跡が我が家のすぐ傍にあった。オレンジ色のカーブミラーである。
 古い川筋に沿って作られている我が家周辺の道は、不自然に折れ曲がっている。場所によってはサーキットのシケイン(S字カーブ)のよう。だから、交通安全のためにミラーが多く設置されている。そのうちの1つが、丸い鏡面を道路ではなく、建物を鏡に向けていた。道路からは鏡の背面しか見えなかった。
 先週の台風の風には、強固なネジ止めでも太刀打ちできなかったのだろう。きっと大きな鏡が帆のように風を受けて、グルリと向きを変えてしまったに違いない。そんなカーブミラーをぼくは見たことがなかった。
 今日、ようやくミラーの向きが直された。1週間経ってようやく大きな傷跡のひとつが癒えた。