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chill out

by 唐草 [2019/09/22]



 SpotifyとかAmazon Music Unlimitedとかの定額で音楽が聴き放題になるサブスクリプションサービスの名前を聞くことが増えている。音楽の聞き方が確実に変化している証拠だろう。ぼくが昔よくやっていた「ジャケ買い」なんて行為は、名称からして過去のものになったのだろう。SNSでよく目にする「パッケージを開けるときのドキドキ感」とか「店から家までの聞けない時間のワクワク感」なんて感覚は、共感すら得られない過去の存在になり始めているだろう。
 ぼくは、餌の前で「待て」の命令をされた犬のような状態は好きでなかったので、昔から前述のワクワク感に共感できていなかった。今では、懐古的で進歩を受け入れられない意見だと考えている。聞きたいと思った瞬間にいつでもどこでも聞ける現代こそ、音楽を最大限楽しめる時代になったと考えている。
 偉そうに講釈を垂れたが、ぼくはまだ音楽のサブスクリプションサービスには加入していない。数千万曲が聴き放題というのは音楽好きには天国かもしれないが、ぼくはその膨大なプレイリストを使いこなす自信がない。なにせ、手持ちの750曲程度で十分に満足できてしまっているからだ。しかも、お気に入りリストに入れた15,6曲ばかりをよく聞いているだけ。
 ぼくは自分で作ったプレイリストをランダム再生して聞くことが多い。お気に入りの曲が次々に再生されると、ヘドロのように重く冷たいぼくのテンションもあがっていく。お気に入りの曲が大集結しているにも関わらず、なんとなく一辺倒で平坦なプレイリストにも聞こえる。
 たまにアルバムを通しで聞いてみると、驚くようなメリハリがある。お気に入りの曲の前に印象の違う静かな曲を挟むことで、盛り上げる場面の前のタメが生まれている。あえて優しい曲を最後に持ってくることで、ずっと続いていた興奮からの開放感が生まれている。意図的に並べられた楽曲がお互いの魅力を引き立てているのだろう。
 それに引き換えぼくのプレイリストは、各アルバムの最高潮の場面のツギハギでしか無い。しかも、ランダム再生なので前後の意図など微塵も存在していない。まるで、腕の悪いDJが、失敗を恐れヒットチャート上位のメジャーな曲ばかり続けざまにかけているようなものだ。
 これでは、どんなに良い曲でも飽きてしまう。ぼくのプレイリストにはchill outできる余裕が必要なのかもしれない。