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モチモチを求めて

by 唐草 [2019/10/05]



 朝食に何を食べるかのアンケートをとったら「ご飯派」と「パン派」が2大勢力になるだろう。意識が高い系の「シリアル派」も勢力を伸ばしているかもしれないが、まだまだ主流派にはなっていないに違いない。日本人にとって米は、ある種のアイデンティティーだとぼくは考えている。外国人が日本国旗を踏みつけていてもどこ吹く風と涼しい顔をしている人が多いと思うが、炊飯器から出した炊き立てのご飯を足蹴にしているさまを見せつけられて黙っていられる日本人は少ないだろう。このようにご飯には、文化的にも精神的にも大きな影響がある。しかし、パンはご飯の牙城を崩しつつある。世界に広がるパンの魅力に人は抗うことはできない。
 ぼくは、自分がご飯派とパン派のどちらなのかを断言できない。仕事で朝が早い日は職場でおにぎりを食べているし、休日とか時間に余裕があるときはパンを食べている。もし、休みの日の朝にご飯が炊いてあったら朝食は絶対にご飯になると思う。現実には、休日の前の晩に米を炊くことなどしない。心では米を求めているのかもしれないが、手軽さと利便性からパンになびいてしまっている。
 単純計算で年間200枚の食パンを食べているぼくだが、最近パンの焼き方が間違っていたのではないかと頭を抱えている。ぼくは濃いきつね色になるまでしっかり焼いたカリカリの食パンこそがベストだと信じて生きてきた。
 ところが、先日トースターのタイマーをセットし損ねたせいで焼き色の薄いパンが仕上がってしまった。もう少し焼くべきだったかもしれないが、空腹に負けてそのまま食べてしまった。パンは見た目の通りカリカリしていなかった。でも、モチモチだった。ちょうどいい具合にパンの中の水分が水蒸気として広がって、生パンともしっかり焼いたパンとも違うフワッとした食感に仕上がっていた。
 この驚きを再現しようとチャレンジしているのだが、なかなかうまくいかない。パンはスーパーで売っている普通の品なので品質は安定している。だから、再現するのはぼくのトースターさばきにかかっている。900Wの強火で2分20秒から2分30秒の間に生焼けパンといつも通りのカリカリパンを隔てる壁があることまで突き止めた。でも、その10秒の間の変化は劇的。理想とする黄金色に輝く瞬間は1秒に満たないのかもしれない。今日もぼくはトースターの前に構えて電熱線の赤い光に照らされたパンの表面を見つめているのである。
 あぁ、すでにぼくの心はご飯の側に無いようだ。