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謎の破片

by 唐草 [2019/10/20]



 朝晩はだいぶ冷え込むようになってきた。いよいよ秋本番だ。これからは毎日少しずつ日も短くなり、寒さも厳しくなっていくのだろう。ぼくの装いも寝具も、日に日に厚手になってきている。冬の足音が聞こえてくる日も近いだろう。
 寒さに備えているのは、ぼくたち人間だけではない。我が家に暮らす猫たちも冬の到来が近いことを本能的に感じ取っているようだ。ちょっとずつだが毛並みが冬毛へと変わってきている。その変化に合わせてぼくらも猫の冬支度を始めた。フェルト製の猫用ドームを家のあちこちに設置したのである。合計5個の色とりどりのドームが、猫好みの場所に置かれている。これが我が家の冬の景色である。
 物置から春にしまった猫ドームを取り出しているときに、足元で硬い音がした。フェルト製の柔らかいドームからは想像できない音だ。足元を見ると4㎝程度の小さな陶片のような欠片が転がっていた。この状況から推察できる結論は、1つしかない。
 しまってあった猫ドームにこの小さな欠片が引っかかっていて、取り出したはずみで床に落ちたに違いあるまい。
 ぼくは、身をかがめて小さな欠片をつまみ上げた。色は灰色で、表面はザラザラとしている。片方の面には半分だけ白い塗料のようなものが塗られた壁紙のようなものが貼られている。塗られていない半分には、茶色く汚れた指紋の跡が見える。厚さは5mm程度で、側面は割れたクッキーの断面ようにガタガタだ。断面を見るとまるで陶器のようだが、陶器にしては軽く紙粘土よりは重い。
 いったいこれは、なんの破片なのだろう。断面の具合や残った塗装面からは、なにかの破片のようにしか見えない。とは言え、こんな大きな破片が落ちるほどの破損が生じれば、否が応にも壊れた部分が目に入るだろう。
 物置は、どこも壊れていない。しまってある他の家具などにも目立った外傷はないし、そもそもこんな陶片のようなものが落ちる家具など何もない。
 別の可能性として猫ドームをしまう前から破片が紛れ込んでいたといことも考えられる。去年ドームを置いていた場所を確認したが、せいぜい猫が爪とぎをした痕がある程度。破片に合う大きさの傷は、どこにも見つからなかった。
 小さな破片を指でつまみ様々な角度から眺めながら記憶を辿ってみた。でも、一向になにも思い出せなかった。本当になんの破片なんだよ、これは…。