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北国のトイレ

by 唐草 [2020/01/02]



 我が家で一番寒い場所は、家屋の北に位置し一日中直射日光を浴びることのないトイレであることに疑いの余地はない。トイレに足を踏み入れることは、冷蔵庫に飛び込むような覚悟が必要である。生理的な切迫した要求に駆られでもしない限り絶対に足を踏み入れたくはない。
 温便座やウォシュレットなどの現代的な装置は設置されているが、底冷えした真冬の空気の前では無力である。臀部を気持ち温めたところで、下半身が無防備な状態では体は冷える一方である。あんなに寒い場所で用を足していたら、それだけで腹を下してしまっても不思議はない。これでは何のためにトイレに向かったのか分からない。
 凍えような個室で無防備で露わな姿で体を小刻みに震わせていたら。あることが気になった。
 関東に位置する平均的な日本家屋である我が家のトイレでもココまで寒いんだ。トイレの仕様が日本全国一律だったら、東北や北海道の住宅にあるトイレは氷点下になっていることだろう。それではタンクの水も凍るし、体から排出されたものも数秒で氷の塊へと姿を変えてしまうことだろう。
 そんな凍てつく環境では、とても日常生活を送ることはできない。きっと北国の現代的なトイレには、暖を取るため何らかの設備や機能が用意されているに違いない。その寒さ対策の正体が気になったのだ。そして、北国の生活の知恵でトイレを快適にしたいと切に願ったのである。
 逃げるようにトイレをあとにして、ぼくは北国のトイレの仕組みを知ろうとネットに向かった。
 素直に「トイレ 暖房」で検索しても小型の電気ヒーターしかでてこない。そこら辺にあるホームセンターで安価に売られているヒーターが、北海道の冷気に太刀打ちできるとは思えない。きっと道民なら常識とも言える暖の取り方があるに違いない。
 こんな妄想にとりつかれたぼくは、一心不乱にトイレについて検索をしていた。しかし、家の秘部とも呼ぶべきセンシティブなエリアの情報は思うように集まらなかった。
 最後にたどり着いたのは、北海道にある水回りのリフォームを行う会社のブログだった。ここにはいくつもの施工例が、ビフォアアフターだけでなく工事の過程とともに掲載されていた。そこに掲載された備え付けの暖房器具を見て、ぼくは北国の秘密を理解すると同時に我が家への導入は不可能だと判断するに至った。
 人生において、こんなにも人の家のトイレを眺めたのは初めてである。